実のところをいいますと 5 (ページ9)

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そんな彼女に顔を真っ赤にしたその女は、お目当てだっただろうメンバーをすっ飛ばして会場をあとにした。

凍りついた会場
何もしようとしない使えない運営
怒りやら悲しみやらで言葉を失ったメンバー達

誰よりも傷ついたはずの彼女が、
自らその場の空気を取り戻すかのように

『あはっ、すみませんでした！
手が滑っちゃったみたいです。驚かせてしまってすみません。私、ちょっと暑かったからちょうどよかったんです！』

って笑った。

なんでよ

なんでこんなにまっさらで純粋でまっすぐな素敵な子が
どうでもいいことで傷つかなきゃいけないんだよ

気持ちを整理する暇もなく、その後すぐに回ってきた私の番。

本当だったらみたくてたまらなかったはずの彼女の眩しすぎる笑顔が、今は疎ましくてたまらなかった。

『こんにちは。
びっくりさせちゃいましたよね、ごめんな』

「セレネ、私あなたが大好き。」

考える暇もなく口から出てきた言葉は案外

私が彼女に1番伝えたかった言葉だった。

少しでも彼女に可愛いって思ってもらいたくて、3時間くらいかけた顔もきっと今はびっしょびしょぐっしゃぐしゃになってるだろうけど

「大丈夫だよ。

あなたのことをよく知らない、知ろうともしない人たちの言葉に耳を貸さなくていいの。

だって、セレネを一目でも見ちゃったら
悔しいくらいみんなあなたの魅力に虜になっちゃうんだから。」

「どんな女だこんにゃろー！って思ってたのに
こうやってまんまとあなただけに会いにここに来た私が証拠になるよ。」

彼女を安心させたくて喋り続けた私の声は、
涙やら嗚咽やらで震えまくっていたけど

少しでも彼女が救われたらいいなって一心だった。

誰よりも強くて肝の座った彼女に、私なんかの言葉が届くか不安だったけど

うん、大丈夫そうだ。
ちゃんと伝わってそうだ。

「セレネは本当、涙まで綺麗なんだね、笑」

綺麗に施されたメイクをビッショビショのグッショグショに崩しながら笑っている顔を見て

やっとずっと会いたかったセレネに会えた気がした。