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貴方「千歌、ご飯と一緒に食べなさい。美味しいと思うわ」

千歌「え～ご飯？」

千歌は渋々とその「得体の知れない物体」とご飯を一緒に食べた。

千歌「ちょっといいかも!!」

そして旅館の仲居さんが鍋に火を付けてくれた。しゃぶしゃぶですね。

お肉も野菜も光って見えるわ。

そしてデザートはメロンと杏仁豆腐。

デザートを食べている途中、お父さんが言った。

父「A、もう恋人はできたのか」

その場の空気が一瞬にして凍る。毎年聞かれるこの質問。

グループの色恋沙汰の質問の次にうんざりするわ。

貴方「別に。今はいない」

父「そうか」

母「この中で独身がAだけだから心配なのよね、お父さん」

父「ああ」

両親揃って余計なお世話です。

まだ遊びたい盛りなんだが。

まず、父も母も週刊誌くらい読んでるはずだから、私の熱愛報道はぼちぼち目にするはずだがな。

まあ、その報道もほとんどが根も葉もない事実だ。

せっかく美味しかった杏仁豆腐が、両親のせいで全然味がしなくなった。

最近、私は男と付き合うことに興味ない。

言っちゃえば、元彼が今までの中で一番良い人だったから、まだどこか忘れられない。

私の恋愛のエンディングロールはこの先一生、体験することはないだろう。

黒羽家と渡辺家、どちらもお目にかかることもないと思う。

食事を終えた我々は大浴場へ向かった。

絵里「千歌、凛ちゃん、危ないから走っちゃダメよ」

凛、千歌「「はーい！」」

善子「他のお客さんもいるから浴場で泳ぐんじゃないのよ」

凛、千歌「「はーい！」」

貴方「時間ないからさっと入ってさっと頭と体洗ってさっと出るわよ。

のんびりしてる暇ないからね」

凛、千歌「「うん！」」

何故そこは「はーい！」じゃないんだ。やはりナメられているのかしら。

我々は四十分して大浴場を出た。

大浴場を出たところ、男性陣はすでに出ていてコーヒー牛乳を飲んでいるところだ。

絵里「ごめんなさい、待ったかしら」

統「いや、今出たとこ」

統さんはそう言うが、ビンはほぼ空っぽに等しい。

善子と洋一郎さんも同じ会話をしていたが、洋一郎さんも兄の統さんと似たようなことを言っていた。

もちろん、洋一郎さんのビンも空っぽに等しい。

二人とも敢えて本音を言わない優しさという部分は似ている。

私の理想は絵里さんと統さんのようなご夫婦ね。波平と舟のような丁度良い距離感がある。