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第伍拾陸話 ページ10

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A side




彼越しに木製の天井が見える。首元を撫でる艶やかな黒髪は、まるで自分を囲う檻のようだった。風に揺られて、擽ったくて思わず身をよじるが、両手首を顔の横に固定されて、浅葱色の双眸に見つめられて、何も出来なくなった。


そんな真剣な目向けられちゃったら、なんて言えばいいのか分からなくなっちゃうよ。




『……無一郎、手首、痛い』

「……ごめん」




微かに力が緩んだ気がするが、それでも動かせないのは、やはり彼の心の中で何か引っかかるものがあるからだろう。


綺麗な顔立ちで、髪の毛も長くて、羨ましいくらい艶やかなのに、あぁ、やっぱり男の人なんだなって、今更改めて実感させられた。


精一杯力を入れたって、肌と畳が擦れる音が響くどころか、彼の表情に変化など微塵もなかった。




「……こう、なるんだよ?どれだけ危険か、分かった?」




“体を重ねる”ということに対して、何も知らないほど私は綺麗じゃない。それはある種の生きる為の手法の一つだったから。それくらいのことは当たり前だとも教えられてきた。


なのに、さっきからの彼の行動のひとつひとつが怖くて堪らなかった。


もっと乱暴にされたことなんでざらにあったのに、身体は面白いくらいに震えて“恐怖”という危険信号を鳴らし続けた。


いつもの優しい彼を知っているから?
それとも、私がただ単に臆病になっただけ?


どちらにせよ、答えに辿り着けるものでは無いことは明確だったが、そんな関係の無いところに意識を飛ばさないと、今の状況から逃げることが出来なかった。


…………わたし、今どんな表情なんだろ。




『……それでもだよ。私は行かないといけない。今もどこかで大切な命が失われてるかもしれないから。こんな私にも出来ることがあるなら、それを精一杯やりたい』

「…………けど、僕は、」

『分かってる。でも過ちを償えるのなら、私はどんなに自分を犠牲にしてでも行く。無一郎なら、分かってくれるよね?』




彼から不安や心配が、触れ合っている肌を伝って流れ込んでくる。そんな彼を安心させるために、私は右手を緩んだ拘束からするりと抜け出させた。そのまま彼の頬に手を当てて、ね?と微笑む。




「…………そんな聞き方、ずるい……」

『ふふ、そんなことないよ』

「……約束して」

『うん。必ず戻ってくる』

「そういうことじゃないんだけど……いいや……」




そう言うと、彼は私を目一杯に抱き締めた。





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設定タグ:鬼滅の刃 , 時透無一郎   
作品ジャンル:恋愛
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ハイキュー!! - (笑)同感です! (2021年6月16日 20時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
楪日織(プロフ) - ハイキュー!!さん» はいそうです!!どうして1回しか押せないんでしょうね、100回は押したいのに……。 (2021年6月16日 17時) (レス) id: fd467e3021 (このIDを非表示/違反報告)
ハイキュー!! - 楪日織さん» もう投票したあとだったんじゃないですか? (2021年6月16日 15時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 楪日織さん» こんにちは!そうやって言っていただけてとても嬉しいです…。今はテスト期間なので更新が泊まってしまっていますが、終わったら絶対怒涛のアップラッシュをしようと思います! (2021年5月29日 22時) (レス) id: f9d5897d9b (このIDを非表示/違反報告)
楪日織(プロフ) - 初コメです。気づけば高評価を押していて、「既に投票済みです」と出たんですがどうすればいいですか??(にっこり) (2021年5月29日 15時) (レス) id: fd467e3021 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年5月15日 15時

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