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「まず、こう握って、」
『んっ、』
「……ふー、」
『ひゃっ、……ちょっと、遊んでるでしょ』
「あ、ばれちゃった?」
彼は木刀に添えていた手を外して、そのままぎゅーっと私を抱きしめた。
『……こら、まだ稽古中でしょ』
「だめなの?」
『今はだめ』
「じゃあ今じゃなかったらいいの?」
『…………うん……』
「へぇ〜」
恥ずかしさが混ざりながらな一言を返せば、同じように一言、無一郎から返ってきた。
見なくてもわかる。無一郎今絶対悪い顔してる。
「あーあ。耳までこんな真っ赤にしちゃって」
『……』
「ほんと、食べちゃいたい」
『ひゃぅ、……ちょ、むいちろ……』
そう言うやいなや、右耳にぬるっ、と舌が這われる。あーん、なんてわざと声を出しながら。
『ぁう、ゃだぁ……んゃ、』
「んふぅ、、……あーん……」
だんだん足と腰がガクガクしてたまらず彼に身を預ける。がっしりとした男らしい腕に受け止められ、恥ずかしくも安心してしまった。
しばらくして、気が済んだのか。やっと口を離してくれた。
「はい、ごちそうさま」
『……もうきらい』
まだ稽古中だったのに。せっかく久しぶりに一緒に出来ると思ってたのに。だから、もう嫌い。
「へぇ、じゃあここでほんとにやめちゃってもいいんだ」
いつの間にか上がってしまった私の体温に、疼く身体に、彼はとっくに気づいていた。
気づいてる上でこんな言い方をして、ほんとに意地悪。
そんな気持ちで、彼の顔を睨んだ。
「ふふっ、言ってくれないと分からないよ」
『……きらい』
「そっか。じゃあやめよっか」
私を抱きしめていた腕をさっと外して、本当に行こうとする無一郎。立ち上がって、去ろうとする彼の隊服の裾を咄嗟に掴んだ。
『…………やっぱ、今がいい』
「はい。よく出来ました」
今日はなぜか、とても優しい夜だった気がした。
*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――
(結局、右肘上がっちゃうの直らなかった……)
(あぁ、Aはそんな癖なんてついてないから安心していいよ)
(え、なんで癖がついてるなんて嘘ついたの)
(ん?ただこうしたかっただけ)
(…………ばか……)
(そのおばかさんが好きなくせに)
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霞桜 - 頑張って下さいね応援してますよ (2022年5月4日 0時) (レス) id: f3badad1aa (このIDを非表示/違反報告)
霞桜 - 無一郎推しです めちゃくちゃ最高ですね私は想像豊か過ぎるので余計に嬉しいです… (2022年5月4日 0時) (レス) @page16 id: f3badad1aa (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - いろはさん» ありがとうございます!不定期ではありますが定期的に投稿できるよう頑張りますね! (2021年1月15日 23時) (レス) id: 2a5e6a7f23 (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - これからもがんばて下さいね (2021年1月15日 22時) (レス) id: 7954c2eb45 (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - むいくん甘甘で可愛い~ (2021年1月15日 22時) (レス) id: 7954c2eb45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍 | 作成日時:2021年1月12日 21時