もしもし、私メリーさん。嘘だけど。

10話 生きて。幸せになって。 ページ10

スコッチさんに次いでバーボンさんも酒に沈み、今は私とライさんの一対一。

夕ご飯の時にはそれなりに話をしていた彼も、晩酌が始まった辺りから少しずつ口数が減っていった。元々彼は口数が多い人ではないけれど、輪をかけて今の彼は静かだった。私達の会話を聞いていたのは分かったけれど、会話に加わる様子はなかった。

くい、とお猪口を煽ってお酒を口にする。それを飲み下す喉仏がセクシーだなんて変なところをぼんやり眺めていると、ふと彼の視線がこちらを捉えた。


【A】

『え？』

【君にはこれから、色んなことを手伝ってもらうようになると思う。苦労をかけるかもしれないが…よろしく、頼む】

『えあ、こ、こちらこそ。…驚いたな、そうも真っ向から言われると思わなかった』

【君が望んだことと言えど、君がする必要はないことだ。俺達ではおそらく、君に見返りを渡すことも出来ない】


…………ライさんもしかしてずっとそんな小難しいことを考えながらお酒飲んでたのかな…もっと楽しいことを考えればいいのに、スコッチさんといいライさんといい。

変に生真面目というか、何というか。見返りが欲しくて手伝うって言ってるわけじゃないのになあ。


『言ったでしょ、ライさん。私は、貴方達が幸せになってくれればそれでいいの』

【だが、それは君の幸福ではないだろう。】


…まあね？一応私も三人が好きだって宣言してるから他の誰かと付き合って結婚してってところを想像すると結構寂しいよ。私だってそれなりに夢みる乙女だもん。

でも、


『貴方達が死んでしまうよりずっとマシ。』

【…A】

『そりゃあ貴方達だって自分達のことなんだから、どれだけ危ない橋を渡ってるのか、理解してることくらい分かってるよ。でも、理解してるもしてないも関係なく、死神は突然に現れる。』

【………】

『…たまらないんだよ。貴方達が死んじゃったときのことを考えるだけで泣きそうになる。貴方達みたいな人には人よりももっとずっと幸せになる権利があるのに、悲願も叶えられずに悔いながら死んでくんじゃないかって、そんなふうに考えると神様さえ憎みたくなる。』


黙ってらんないよ。


『だから。私に出来ることなら何でもやろうと思ったの。例え最後に私の意識が消えてしまってもいい。貴方達が幸せになってくれるなら、私は私の全てを引き換えに出来る』

【…どうして君は、そうとまで…】

『…好意なんてものは、理屈じゃないんだよ。』

11話 元々誤魔化すには無理があったのだ。→←9話 信頼と引き換えに、私はIFを想定する。

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