もしもし、私メリーさん。嘘だけど。

9話 信頼と引き換えに、私はIFを想定する。 ページ9

『…あーらら…スコッチさんたら寝ちゃったよ』

【スコッチは考え事をしながら飲むといつも寝るんです。気にしないでください】


流石バーボンさん、慣れてるなあ。

…とはいえバーボンさんもなかなかに酔っているようだけれど。晩酌モードでまったりったって三時間経てば酔いもするよなあ。おつまみはいつもこうして飲んでいるのか作り置きがあって、それを持ってきてつまんでいた。そうくるとは思ってなかったからびっくりした、酒飲み強い。


【…Aさん。僕は、貴方を悪い人だとは思いません。】

『うん？うん。』

【…だけど、不安なんです。貴方が敵でないのか確信が持てなくて、もしもを考えると、信じるのが怖い】


……これはもしや、彼の本音かな？

彼のような人が、私の様子を窺うために自分を弱く見せる演技をするとも思えない。まして、今の彼は降谷零でも安室透でもない、組織の人間、バーボン。彼が私の言うことを本当に信じているなら、そんな違いあってないようなものだけれど。


『…ひとつ、聞かせてね。』

【…はい。】

『バーボンさんは、私を信じたいと思ってくれてるの？』


こくり。彼は頷く。目の前でライさんがまだ静かにお酒を飲んでいるというのに、どうも彼の理性というものはお酒に溶かされてしまったらしい。


『…うーん。そうだなあ。これで私が人間だったなら、私が裏切ったら殺していいよって言うところなんだけど』

【いやです】

『んんんそっすか…！いや、うん、もしもの話なんだけどね？そうだなあ…私には失うものがないから私のデメリットになるものがなかなか…あ、そうだ。』


私が貴方を裏切ったなら、もう二度と信じようとしてくれなくていいよ。

バーボンさんは目を見開いた。ライさんは静かにこちらに目を向ける。


『私が一度でも裏切ったなら、心の底から私を憎んで。心の底から私を恨んで。嫌って、蔑んで、ずっとずっとずっといっぱいいっぱいいっぱい。私の姿を見るだけで、私の声を聞くだけで嫌悪感が湧くくらいに。───そうしたら、それはいずれ本物になるから』


貴方の重荷が軽くなるなら、私はそれでいい。


『どんな罵声も罵倒も、どんな侮辱の言葉も。私は全てを受け入れる』


…まあ、そうとまでなったら私は貴方達に関わることをやめるだろうけれど。

じっと私を見つめていたバーボンさんは、視線を手元のお酒に落とす。


【…信じたいって言ってる相手に、貴方は酷いことを言う。】

10話 生きて。幸せになって。→←8話 だからこんなに愛してる。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す