もしもし、私メリーさん。嘘だけど。

4話 芋蔓式に接触しようか。 ページ4

【あー。あー。接続テスト。私の声は聞こえているかな？】


テレビ電話という形で俺達に姿を見せた彼女は椅子に座り、背後に大量のモニターを並べていた。

ライとバーボンは互いに顔を見合わせ、俺に目を向ける。そんな顔をしないで欲しい。俺だってまだ、彼女の存在を信用しきっちゃいないんだ。


【ふふふ、びっくりした？まだテレビ電話とかそこまで復旧してないから無理もないかな…ま、都市伝説とか怪談話とかはたまた夢の一端とか考えて。“もしもし、私メリーさん”ってね】

「……結局のところ、お前は一体何なんだ？」

【ハッカーという解釈も、クラッカーという発想も、決して間違いじゃない。率直に言えば私が出来ることだってそれらと大差ない。そういう存在だと思うなら、話はそれで終わるんじゃない？】

「ハッカーでクラッカーで、俺の夕飯の内容まで知ってるストーカーだってか？」

【ううーん。まあ、やってることは大差ないけど、私はヤンデレ属性とか持ってないから…ただまあ、うん、大好きではあるから間違いではない？】

「……お前きもちわるいな」

【ストーカーだって前提で話進めてるでしょ。まあいいや…私が何かって質問自体には、答えることは難しい。適切な解答がない】


どう伝えたものか、と彼女、Aは両手を合わせて考え込む。何かを祈る、というよりはやはり何かを思考するときの癖であるように見える。


【うーん…うん。情報を並べてニュアンスを掴んでもらうか。一応私も人理を外れた存在であるわけだし】

「は？」

【こっちの話。ええとね、まず第一に、私の肉体は多分そこにはありません。】

「…は？」

【うーん、良い反応。三者三様に違う反応してる辺り、それはそれで仲の良さかな？】

「話を逸らすなよ」

【混乱してるところに詰め込んでも頭に入らないでしょ？なんら難しいことはない、言葉の通り】


私には外界の肉体がないの、と彼女は語る。


【私の意志はここにあり、私の存在を証明するものは私の意識しかない。もっと分かりやすく。私が介入できるものは、須らく存在する“端末”だけなの】

「……端末。この携帯電話とか、パソコンとかか。」

【その通り。貴方達の住まう世界を外界とするなら、私の居るこの世界は電脳世界。インターネットが通ずる全てのもの。人らしい言葉を選ぶなら、ここが私の住処なんだ】

「……君は、人間ではないのか。」

【そう、だね。人の肉体を持って生きるものを人間とするなら。】

5話 死なせたくないんだよ。反則技を使ってでも。→←3話 電話切っちゃやーよ？

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