もしもし、私メリーさん。嘘だけど。

12話 別に、後悔なんてしていないんだよ。 ページ12

【…どうして人間の君が、そんなことに？】

『私に神様と名乗ったあの人が言うには、私は適合者だったらしいんだ。分かりやすく言うなら私は実験に適したマウスで、これは私というマウスを使った実験なんだって。』

【………】

『ふふ、言ってることがよくわかんないでしょ。でもね、私にはそうとしか言えない』

【…一体、何の為にそんな…】

『“神様”の目的は可能性の探究。要するに、私という異物をぶち込んで世界がどう変化するのか観察したいんだよ』

【………】

『時代を進歩させるのはいつの時代も反感を恐れぬマッドサイエンティストだ。…だけどね。そんな人のマウスになると決めたのは、他ならぬ私なんだよ』


ライさんの表情は厳しい。私を咎めるような眼差しは鋭く、それでも私の意志は揺るがない。そんな彼の表情が凛々しくて素敵だとずれたことを考えていると、彼が口を開いた。


【…何故、そんなマッドの提案を受け入れた。】

『デメリットよりメリットの方が大きかった。人間の私はまだ未熟な小娘で、出来ることの方が少なかった。そんな私が適合者だと神様は言った。夢なら夢でいつか目が覚めると。そうでなかったとしても神に相対して私一人が敵うわけもないと』


目覚めたときの環境が環境で、多分もう手遅れなんだと理解したから。だから私は、与えられた力を有効活用することを決めたんだ。


『幸いなことに、与えられた力を何に使うかは私に一任されていた。だから私は───貴方達に協力することにしたの。』


それが、経緯。それが私の全て。神と呼称されたその人が本当に神なのか、自らを神様と名乗ったあの人は誰なのか。そこまでの興味はないし、多分知ることは出来ないだろう。

私をここに放り込めた時点で、そもそも私が敵うなどと思ってはいけない相手なのだ。私は無駄に死にたくはないし、現時点で“神様”に逆らう必要があるとも認識していない。


『…ここはね、あらゆるものが剥き出しなの。だから調べることなんて簡単だし、弄ることが出来るのなんて普通なんだ。ここにあるのは私の意識と無数の情報。貴方達と話をすることは安らぎに繋がる。それひとつにだけ集中できるっていうのはね、貴方達が思う以上に快いものだよ。』

【…それは、刺激が強そうだな】

『それなりに、ね。だからこそ変化にいち早く気付けるし、私はそれを悪いことだとは思わないけど』

【…余程なんだろうな。君が俺たちに向ける好意というものは】

『…それなりに。』

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