もしもし、私メリーさん。嘘だけど。

2話 さあ、支配してやりましょう。 ページ2

『厳密に言えば、支配、というよりは君に電脳世界を管理してほしいんだ』

『電脳世界の管理』

『そう。君に任せたい世界はその部分が結構入り組んでいてね。まだマシな部類ではあるけれど、それを悪用せんとする悪人もそれなりだ』

『つまり…悪人のアクセスをブロックすればいいってこと？』

『いや、何をするかは君に一任したい。これは可能性の探究だ、誰にコンタクトを取るも良し、何に介入するも良し。』

『私が悪人になるってことは考えないの？』

『それもまた探究材料のひとつ。それに、それを引っ括めての適性判断だ』

『……なるほど。私の行えることのほとんどは許容範囲であると。流石神様』


これはその懐の広さに甘えない手はないだろう。慈愛だけで事が済めば世界の仕組みはもっと単純だった。

これが夢だったならそれはそれでいつか目覚めるだろうし、或いは現実であったにせよここまできたら私一人に逆らう術もあるまいて。順応するに限る。


『分かった。私は私のやりたいようにやってみる』

『…すまないね。君を巻き込んでしまって』

『構わないよ。単純に考えても失ったものより得たものの方が多いし、こうやって教えてくれたことも神様の優しさでしょ？説明は神様の義務じゃない』

『……ありがとう。やはり君は優しいね』

『合理的なんだよ。純真無垢とは部類が違う』

『純真さは時に残酷さを孕む。人を包み込む慈愛の心では決してない』

『…私だって、そんな御大層なものを持った覚えはないけれどね。』


『……もう時間だ。これより君に世界を明け渡す。大体のことは君の思う通りになると思うが、何かあれば私に連絡を取ると良い』

『アフターケアも完璧だね。有り難い』

『…神は君に期待している。その成果だけではなく、君が何をしてくれるのか興味を示している』

『まあ、ぼちぼちやっていくよ。』

『ああ。頑張って』


そうして世界は、私に明け渡された。

大きなものを背負うことに対する負担を感じないのは、私に肉体がないからだろうか。電脳世界を支配下に置いたことに拠って、私自身の処理能力も著しく向上しているらしい。

先程まで傍にあった彼の気配は既にない。あちらからのアクセスは途絶えたらしい。まあ何かあれば連絡していいとのことだから、それはそれで良いだろう。

まずは把握することだ。この電脳世界を生み出した、外の世界のことを。元いた世界を外と呼ぶのは些か寂しいけれど、憂いていても事は進展しない。

3話 電話切っちゃやーよ？→←1話 自分で神様って言っちゃいますか。

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