1話 自分で神様って言っちゃいますか。 ページ1
私が目覚めた時点で、そこに私の身体はなかった。そこにあったのは、私の意識だけだった。それはある種の霊体というべきか、はたまた私みたいなのをプラズマとでもいうのか。
『やあ。目覚めたかい?』
それは、私の頭に響いてきた。眠りに落ちる一歩手前で、誰かの声が反響する感覚。
『誰なの?』
言葉を発せられる喉もなく、しかし私は言葉を発した。私は無意識に意思を言葉に変換した。
『在り来りな呼称を許してくれるのであれば、私は君に“神様”と名乗ろう。』
神様。確かに在り来りで信憑性に欠けた存在だけれど、彼くらいでなければ、私のこの現状を説明出来そうになかった。
『君は、今のこの現状を理解しているかな?』
『うん、分かるよ。私には目がない。耳がない。鼻がない。口がない。多分今の私にあるのは、魂と呼ばれる私の“意思”ひとつだけ』
『そう。そうだ。その通りだ。』
『それでも分かる。形も。色も。音も。でも匂いや味は解らない───ここは多分コンピュータの中なんだ』
『ああ、うん。そうだよ。流石“適性者”だ』
適性者。それはなかなかに謎の多いキーワードだ。だけれどよくあるキーワードとも言える。
私がそれであるという言葉の意味を読み解くならば、私がこの状況下に順応出来る人間である、といったところだろうか。
『率直に言うとすれば、君は一番それらしい人間だったんだ』
『それらしい?』
『人間はこの言葉が嫌いだったかな。被験体。実験体。神は可能性の探究を望まれた』
ははぁ。説明をしてくれる彼自身が当事者であるわけではないらしい。別に誰が原因だって私は構わないけれど。
人間のままの私では、何もなかった。だから、なんらかの力を得られることは望ましいことだった。例えその代わりに何かを失っても、だ。
『君自身の特性を100%活かすには、人間では不十分だったんだ。活かせるところまで成長するに時間がかかり過ぎる。肉体があるが故の負荷だね』
『物の良し悪しは何事にも付き物だよ。私の特性…というのはあんまりピンとこないんだけど』
『無理もないさ。それは把握するのはもっと生きてからのことだ、人の肉体はまだまだ効率が悪い』
『んふふ、神様然とした発言だねえ』
『…君でない人間だったならもっと怒られるところだよ』
『そういう意味でも、私は選ばれているんでしょう?』
『ああ、その通りだ。この電脳世界はこれより君の支配下になる』
電脳世界。なるほどねえ。
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紅夜桜(プロフ) - ウィスキートリオ俺も好きです!特にスコッチ見たいな人は尊敬しています。この小説の続きが気になって夜しか寝れない! 体調に気を付けて更新頑張ってください!待ってます! (2018年2月14日 22時) (レス) id: 76ed65e459 (このIDを非表示/違反報告)
かさかさスライム隊長 - いいっすね!こういうの!やっぱシリアスよりシリアル派ですん(^ω^)更新ふぁいとです!! (2018年2月6日 23時) (レス) id: 1f085f3530 (このIDを非表示/違反報告)
エレクトル(プロフ) - 琥珀さん» ありがとうございます!今はちょっと小難しくなってますがギャグもほのぼのも混ぜ込む予定なのでお楽しみいただければ嬉しいです! (2018年1月31日 9時) (レス) id: 63aaeb6f7a (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 続きが読みたくなる内容でした。次がとっても楽しみです!!! (2018年1月30日 22時) (レス) id: b7ed6803b2 (このIDを非表示/違反報告)
エレクトル(プロフ) - ハニートースト 通称,ハニトン!さん» 天才ではないですがウイスキートリオに対する愛はあります(`・ω・´)キリッ応援ありがとうございます、ぼちぼち更新しますので鼻血を止めてから見てくださいねw (2018年1月30日 21時) (レス) id: 63aaeb6f7a (このIDを非表示/違反報告)
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