記憶と熱情 8. ページ8
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「あのさ、覚……」
「んー?」
覚が作ってくれた朝ごはんーー相変わらず料理上手だーーを半分ほど食べ終えた頃、とりとめもなく続いていた覚の話を、私の方から打ち切る。
覚に喋らせてばかりだったけど、言いたいことは山ほどあった。何から聞けばいいんだろうか。
「……なんで、2週間も会ってくれなかったの」
悩んで、悩んで、最終的に出たのは、結局1番聞きたかったことだった。
覚はちょっと驚いた顔をした後、一瞬、何かを思案する顔つきになる。かと思ったら、またいつもの悪戯っぽい笑みに戻って。
「なんでも、ないよ」
今日のご飯、イイ感じに炊けたでしょ。水加減忘れてたかな〜とか思ってたらピッタリだったよ、流石俺って感じ。
本当に、何事もなかったかのように、覚はまた、とりとめもない会話を始める。なんでもないわけないじゃん、と激昂することも、詰ることもできた。付き合い始めてから、覚相手に感情的になったことも、1度や2度ではない。それでも私は。
「そっか」
覚を、信じたかった。信じないと、今この瞬間、覚が目の前から消えてしまう気がして。夢か真か、まだ信じきれていなかった。
食器をぶつければ、かつんという硬い音。ご飯を噛めば、柔らかな甘み。頬をつねれば、鈍い痛みが伝わる。これは、現実。なにやってんの、と笑う覚に、なんでもないよ、とお返しのように言った。
聞きたいことは、またいつか。彼ならきっと。時が来たら話してくれるはずだから。今はこの幸せを大切にしよう。
2人を繋ぎ直してくれた、電気のように痺れる感触が恋しくなりそうだった。
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河原美羽奈(プロフ) - 佐吉いろはさん» たくさんある作品の中から当方の作品を見つけてくださりありがとうございます。感想とても嬉しかったです。今後も他の作者さんに感想を送ってくだされば皆さんの糧になるかと思います……!! (2018年12月23日 16時) (レス) id: 1e0898c908 (このIDを非表示/違反報告)
佐吉いろは(プロフ) - はじめまして! とても素敵な作品でスラスラ読んでしまいました。2週間の2人を考えると、もう一度2人が会話をすることができて本当に良かったです!! (2018年12月22日 14時) (レス) id: fdee9d9312 (このIDを非表示/違反報告)
河原美羽奈(プロフ) - りょうです。さん» コメントありがとうございます。解釈は自分の中でもこれというものを決められていなくて(笑)読者の皆さんに想像して貰えたらいいなあ、と思ってます。コメント、とても嬉しかったです。 (2018年11月15日 17時) (レス) id: 1e0898c908 (このIDを非表示/違反報告)
りょうです。(プロフ) - あっているかは分かりませんが、ホントに面白かったです! (2018年11月11日 12時) (レス) id: f9bb48da83 (このIDを非表示/違反報告)
りょうです。(プロフ) - 夢主は障害の発生が予測されていて、2週間前から発症してしまい覚が”いなくなったもの”というようになってしまった。発症した夢主に対して覚は、忘れないように少しでも存在が残るものを…。という感じでしょうか。考える大人の小説ですね。とても面白かったです (2018年11月11日 12時) (レス) id: f9bb48da83 (このIDを非表示/違反報告)
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