3話 ページ8
とはいえ、とりあえず退職はしないことにした。
大我のことが心配っていうのがいちばん大きな理由だったのだけど、とりあえず彼が少しでも働きやすい環境にしてから転職したいと思って。
ただの同期なんだけど…でもやっぱりそんなにあっさりとは見放せない。いつも長い前髪と分厚い眼鏡で顔を隠して、自信なさそうにしているけど、本当は誰よりもやさしい人だから。
北「それで…とりあえず情報を擦り合わせたいんですけど」
今日も高そうなスーツを着た社長は、ビールをひと口飲んで片方の眉を上げた。私では到底手の出ないような高級レストラン、初めて見るようなうつくしい料理。緊張のあまりお皿ばかり眺めていた私は、それではっとして顔を上げた。
「あ、すみません」
北「あぁ、どうぞ遠慮なく召し上がってください。ここの料理はどれもおいしいですよ。…うちの両親に会っていただく前にまずは柏木さんのご両親にご挨拶に行きたいんですが…」
「は、はい…」
北「それにしても僕たちはお互いのことを知らなさすぎるので、例えばいつから付き合ってるかとか…設定を決めておけとじゅ…秘書の田中が」
なるほど。たしかに馴れ初めは？ なんて聞かれたらめちゃくちゃ困るもんね。
そのことは私もここ数日ぼんやりとだけど考えていて…社長がどう思うかはわからないけど、とりあえず話だけでもしてみようかと思っていたのだ。
「あの、お恥ずかしい話なんですが…」
北「はい」
「実は私、少し前まで社内の方とお付き合いしてたんです」
すみません、と言うと、社長は不思議そうな顔で瞬きをした。
北「どうして謝るんですか？ 社内恋愛は特に禁止してないはずだけど…」
「えと、あの」
北「あぁごめんなさい。続けてください」
「はい。それで、プロポーズされて婚約したはずだったんですけど…その、ほかに好きな人ができたからって言われて」
北「それで別れた、と」
「そうなんです」
親には社内の人と付き合ってる、という話しかしていなかった。ちょうど元カレと付き合い始めた頃は父の会社が大変で忙しそうで、恋人ができたと浮かれて紹介できるような雰囲気じゃなかった。
それでなんとなーく紹介できないまま、親からもなにも聞いてくることはなく。プロポーズしてもらったから今度時間作ってくれる？ と聞いてOKをもらったところで話が止まっている。実は別れたこともまだ話せていない。
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なな(プロフ) - 更新待ってます！！ (3月15日 14時) (
レス) @page46 id: a7a739d86f (このIDを非表示/違反報告)
めらとにん(プロフ) - めちゃくちゃきゅんきゅんしてます、！！更新待っています！これからも応援してます🙌🏻💗 (2月20日 21時) (レス) id: 66bf5bffa1 (このIDを非表示/違反報告)
えみりーた(プロフ) - 更新待ってました！楽しみにしてます！ (1月9日 22時) (レス) @page43 id: d4d342cc13 (このIDを非表示/違反報告)
ともか(プロフ) - はじめまして。続きが気になっていたので更新嬉しいです。これからの2人の展開にドキドキしながら楽しみにしてます♪ (1月8日 21時) (レス) id: ba59c24797 (このIDを非表示/違反報告)
ymmrnn(プロフ) - とても文が綺麗で読みやすく、早く続きを読みたくなる作品です。2人にトキメキました。応援してます！ (10月31日 13時) (レス) id: a7dac5969c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エルダー | 作成日時：2023年10月2日 23時
