あなたもあまあまに ページ16
エクボです
………………
「おいA。それさっきから何個目だ?」
小さな八つ入りのミニチョコレートケーキを食べている私に、隣でエクボさんが言った。
「四つかなぁ」
ビニールから出した濃厚なケーキにかぷりとかぶりつきながら、私は答える。
このケーキは昨日、スーパーで見つけて美味しそうだったので、そこそこの値段をふりきって買ってきたものだ。
食べてみるとあら不思議。10センチもあるかないか程の小ささなのに、味わい深い濃厚な味で、先ほどからビニールを開ける手が止まらない。
「そんなに美味いのか? それ」
いつもの癖みたいに眉間にシワをよせたエクボさんが聞く。
「美味しいよ」
……そういやエクボさんって、もう霊になっちゃったから食べ物なんて食べれないんだっけ。
せっかくエクボさんが来てるのに、ちょっと空気が読めないことしてるかな…なんて思ってると、エクボさんがもっと空気の読めないことを言ってきた。
「でも、そんなに食ってると太るんじゃねえか?」
この悪霊、年頃の女の子の禁句をさらりと言うとは。
「余計な事言わないでってば……。それにこれ、すっごく甘くて美味しいですよ」
なんとか頭に来る感情を抑え、彼にもわたしの食べかけをおすそ分けするようにケーキを突き出す。
まぁ、エクボさんが食べれないってことはわかっているんだけど。
……しかしその瞬間。
エクボさんは少しだけ固まって何かを考えていたが、ぱくり、と私の食べかけを小さなその口で奪ったのだった。
「え」
予想もしていなかったことをされて、思わず私が固まってしまう。
冗談だったのに、エクボさんって食べ物食べれたの?
それに、私の食べかけ、ってことは。
そんなことをぐるぐる考えていると、エクボさんが面白そうに笑った。
「どうした? 俺様だって多少はこんなこと出来るぜ。今度はAの唇ごと奪ってやろうか?」
「ま、まだ駄目!! 」
一瞬で顔が赤く染まっていくのがわかって、思わず叫んでしまった。
エクボさんがまた嬉しそうにニヤニヤ笑う。
そういうことなんてまだ早い。
なのにエクボさん、私のことまたからかっちゃって。
「ま、お前が嫌がってもその内するけどな」
彼は小さくふよふよ浮きながらも、どきりとするようなことばかり私に言う。
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作者名:なつせ | 作成日時:2016年11月28日 23時