隣人のままでいい (ページ2)

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翌日ゴミ出しに行った帰りに玄関先でお隣さんに出会った。

深「おはよ〜ございま〜す。」

めちゃくちゃ眠そう。そして部屋着。平日だけどお仕事は大丈夫なのだろうか。

　『おはようございます。』
深「昨日ありがとね。久しぶりに手作り食べたらうまかった。」

久しぶり。色々と気になることが多いけれど、深く聞くほどの仲でもないし良いか、と当たり障りのない返事をして中に入ろうとした時だった。

深「また作ってくれるとめちゃくちゃ嬉しいなぁ。」

チラチラとこちらを見ながら少しの期待を込めた目を向けるお隣さんと固まる私。

深「美味しい料理が待ってるって思うと仕事も頑張れちゃう気がするなぁ。」

押して押してこちらが折れるのを待ってる彼にニコッと笑顔を貼り付ける。

　『考えときます。』
深「いや、それって作りませんと一緒じゃん。」

それでは、と言い逃げして出勤の準備をする。昨日の優しげな瞳が頭から離れないのはきっと気のせいだ。

深「あり？また会っちゃったねぇ。」

いつの間にか敬語も抜けたお隣さんと帰宅した際にまた出くわした。

深「今日のメニューは？」
　『なんでしょうね。』

うわ、流された、と笑う彼のことを私は知らない。

　『それでは。』
深「ちょっ！待ってよ！」

掴まれた腕はそんなに力が入っていないのにどうしてか振り解く気になれなくて。

深「俺今日何も食べてないの。」
　『それは大変ですね。』
深「そう。大変なのよ。お腹ぺこぺこよ。」
　『私を引き止めるより出前でも頼んだほうが早いですよ。』

それもそうだけどさ、と苦笑いする彼の名前も知らない。

深「なんだかんだで優しいお隣さんと一緒に食べたいな、なんて。」

だめ？と首を傾げる彼はきっと私より年上なのに何故か可愛く見えた。

　『お隣さんではなくてAAです。』
深「深澤辰哉です。やっと自己紹介だ。」

てことで晩御飯にしよ〜、と彼は私の扉の前で鍵が開くのを待っている。

　『変なことしたら警察呼びますからね。』
深「いやーん。Aさんたらえっち〜。」

イラッとして持っていた荷物を彼に押し付けてさっさと家に入ると慌てて深澤さんも入ってきた。

深「ほんと、お人好しだよね。」
　『初めて言われましたよ、そんなこと。』

社交的と言えない私をお人好しだなんて、変わった人だな。

深「お人好しで、優しくて、素敵なお隣さんだよ。」

お隣さん、に距離を感じたのは何故だろう。