序章『千羽鶴と藤の花の御守り』玖 ページ10
呉羽には目立った外傷は無かった。
屋敷の人たち────エリコの家族に頭を下げて謝罪すると、「そんな事しなくても良いのよ」と許してくれた。
そして、それが呉羽には苦痛だった。
どうせなら責めてほしかったのだ。
そうすれば少しは許してもらえる。そう思っていたから。
エリコの家族が「貰ってやって、これは呉羽ちゃんにエリコが作ったものだから」と言って千羽鶴を渡してきた。
鬼が暴れたせいで、その千羽鶴は所々傷ついたり、破けていたりしたのだが、これはエリコが生きていた証。呉羽は千羽鶴をありがたく貰い受け、自分に対する戒めとして、部屋の真ん中に飾っておいた。
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「おじいちゃん。私、剣士になりたい。あの人みたいに誰かを救うの。義勇さんみたいに」
呉羽のその言葉に心底驚いたのだろう。
呉羽の祖父は目を大きく見開いた。彼は呉羽がエリコという最愛の親友を失ったことで壊れてしまうのでは、と危惧していたのだ。
しかしすぐに険しい表情となる。
「良いのか?孫娘だからといって優遇は一切せん。その上、お前の場合身体が弱いために他より時間がかかる」
「良い。構わない。私は自分が傷付くより、誰かが目の前で傷付くのが嫌なんだ」
呉羽目は真剣だった。
強い意志を持ってそう言っているのだということを祖父は痛いほど理解している。
「四年。お前の場合、少なくとも四年は必要だと儂は思う」
「体力作りに必要なの?」
「普通は一年で選別に行くが、足りなければ行かせんしな。どの弟子たちもそれは一緒じゃ」
呉羽は布団を握りしめ、こくりと首を縦に振る。
祖父の目は、呉羽に見えなかった。
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かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年8月18日 10時) (レス) id: ba1b78c8bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マドレーヌ | 作者ホームページ:http://aIKtu&souselove
作成日時:2019年8月18日 10時