【鬼滅の刃】純白少女と水柱 (ページ8)

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序章『千羽鶴と藤の花の御守り』漆ページ8

使ったことなど無い刀。
どういう技が存在するのかは修行している人たちを見てきたから覚えている。

(覚えてるからって身体は動いてくれたりしないけどね！)

呉羽は冷静だが、発狂している。
屋内で過ごすことしか出来ない自分のただ一人の友達が今、無残な状態で死にかけているのだ。
残っている自我で呉羽は溢れ出ようとする怒りを押さえつけ理性を保とうとするが、限界も近い。正直このまま突っ込んでしまいたい。そう思わずにはいられなかった。

あたかも戦える人のように刀を構え、無い胸を張り、強者として見られようとする。

(どうしよう、このままだと私もエリコも死んじゃう。鬼殺隊の誰か、来てくれないかな)

とにかくエリコが掴まれている腕は切断したい。
これ以上エリコの脳に負担をかけていてはそのうち潰れてしまい呉羽の理性は飛ぶだろう。友人の死を目撃するということはそういう事である。

呉羽は先程走ったために呼吸が荒い。
足どころか身体中が震え、堪えていなければ涙が溢れてきそうだ。
心臓もいつになく強く早く鼓動する。
その音が大して耳がいい訳では無い呉羽の耳にさえ届く。

(どうしよう、剣術、かじるくらいはしておくべきだった。身体が弱いとか、言ってる場合じゃ無かったんだ)

模造刀なのだから、呉羽が持っている刀は脆い。
衝撃を与えたら間違いなく折れる。
呉羽にも当然それは分かっていた。だからこそ自分がどう立ち回ればより生存率が上がるのか考えていた。

｢何だ、土壇場で覚醒だの身の丈に見合わない実力を持ってるだの、期待してみたが的外れだったなあ。一思いにいかせてや────｣
｢──────！？｣

それは、一瞬。
瞬く間に現れて、その人は瞬時にその鬼の頸をはねた。

月を背に現れたその人は髪を後ろで束ねている男性。
月光を浴び、青色に輝く刀身。

目にも止まらぬ速さで現れ、いかにも硬そうなその鬼の頸を斬った。
エリコを掴んでいた腕も頸が斬られたことにより消滅。エリコは地面に倒れ込む。
そして呉羽は鬼殺隊の人が来てくれた事に安堵したのか泥のように眠り込んでしまった。