一章『梟が告げる夜』伍 ページ15
薬屋の店主はいかにも酒豪という雰囲気だった。
着ている着物もはだけていて、胸元が開いている。
「そいつらを介抱し続けると気づくんだがなぁ、全員あのパーティーに出席出来るような金持ちばっかなんだよ」
頭を掻きむしりながら面倒臭そうにそう言う男性店主からは何故か哀愁が漂っていた。どうにも疲れているようだ。
「この辺医者いねえからなあ。俺んとこに駆け込んでくるんだわ。『金はいくらでも払うから助けてくれ〜』ってな。だいたいの奴らがそういうもんで、すぐに気付いたよ。着ている服も洋風だったりしたしな」
どうやら看病疲れのようだ。
一日中寝込んでいるような重傷者もいるらしく店番はほとんど嫁に任せているとか。
「今はどうなんですか?」
「嫁が見てる。疲れたんで気晴らしついでに店番やってんだ」
「ふうん・・・」
そういえば顔色が悪いのは豪華な服を着ている人ばかりだったと呉羽は思い出す。
中にはいかにも権力と金に依存してそうな小太りのおっさんもいたし、店主の言っていることは何ら間違いではないだろう。
「でもそいつら、『パーティーは行かないと』って言ってんだぜ?止めるのも一苦労だっつの。なんかあんのかねえ。腹の肥えた奴らを満足させられるような見世物がよ」
店主は「ふらふらなのに行かせるわけねえのによお」とぼそぼそ呟いている。
それを苦笑いしながら紺色の着物の女性は見ていた。本職の医者なので店主の苦労を悟ったのだろう。女性は同情の目を向けていた。
(パーティーに何かあるのは間違いない。どうやって乗り込もう。招待状とか、必要だったりする・・・?)
「店主さん。そのパーティーってどうやって行くの?」
「あん?金払うんだとよ?入口で。少ないと入口の奴が判断すると入れねえ。判断基準は誰にも分からないんだと。・・・お前、行くのか?」
呉羽は来た!と思った。
実家にはそれなりに貯金がある。祖父は元柱だし、父は現在進行形でそれなりに高い階級に位置している。
お金の心配はいらない。
「行きませんよ。気になっただけです」
嘘も方便。
呉羽は迷いなく嘘をついた。
ついたのだが、二人にはお見通しだったようだ。
「私、心配なので今夜ここに泊まっていきますね。気分が悪くなったら、おいでくださいな」
「俺家主なんだが拒否権ないのか?でも人手が多いと助かるからなあ。頼むわ。本職の医者がいてくれるとありがたい。いつでも来いよ、嬢ちゃん」
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かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年8月18日 10時) (レス) id: ba1b78c8bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マドレーヌ | 作者ホームページ:http://aIKtu&souselove
作成日時:2019年8月18日 10時