一章『梟の告げる夜』壱 ページ11
「ホーホー」
遠くまで聞こえるような声で梟が鳴いている。
それは災いの合図だ。
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「よくやった。よく受かった!」
祖父と父が、最終選別から戻ってきた私を抱きしめた。
剣士の修行を始めてから、体力もだんだんとついていき、滅多に発作を起こしたり咳をすることも無くなったとはいえ、七日も鬼の巣窟にいれば発作も起こしかける。
「ぜェ、ゼー、ただ、ただいま・・・」
「良かった、良かった・・・」
呉羽は祖父に「最低でも四年の時間はかかると思え」と言われていたが、呉羽が懸命に努力を続けた結果三年ほどで最終選別に向かう許可が降りた。
初めの一年はひたすら体力作り。呉羽は運動の基礎も固まっていなかったので時間がかかった。
物覚えも悪いらしく、呉羽は剣技の習得にも時間がかかった。
ただし、一度覚えたら絶対に忘れないのでこの先その剣技を突き詰めていくだろう。体質にも合っていたらしく呉羽は巨大な壁などはなく一年程で知識としては習得した。
そして最後の一年は何をしていたかというと、ひたすら他の弟子たちと手合わせをしていた。
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「受かったのは二人だけか」
「そういえば一人をのぞいて全員が生き残った選別がありましたね」
「・・・すごいね、それ」
呉羽は自分を守ることに精一杯だった。
「そうだ、いずれ刀が来るだろう。怠けるのはいかんが、ゆっくり休むといい」
「ありがとう」
呉羽は折り鶴の描かれた羽織を羽織っている。最終選別にも着ていった。どんな時もエリコを死なせてしまった自分の不甲斐なさを思い出し、辛いことから逃げられなくするための羽織だ。
部屋に戻れば真ん中に吊るされるボロボロの千羽鶴。
無理もないのかもしれない。何せあれから三年が経っているのだから。
(あの人、義勇さんは元気にやっているのかな。あんなに強かったんだから、階級すごく上がっているんだろうな)
思い出されるのは命の恩人。
左右で柄の違う羽織を羽織っている無口少年。
もう少年という歳なのかは疑わしいのだが。
「覚えてるかな。私を・・・」
冨岡義勇を思い出す時は決まって罪悪感にかられる。
泣きたいけど泣けない。
叫びたいけど言葉にならない。
そういった不思議な感覚に陥るのだ。
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かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年8月18日 10時) (レス) id: ba1b78c8bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マドレーヌ | 作者ホームページ:http://aIKtu&souselove
作成日時:2019年8月18日 10時