椿 (ページ6)

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｢私ってそんなにわかりやすい？｣
｢ん、まぁ、俺はわかったけど｣
｢……そか｣

誰も言わないでね、と釘を指すといつもの砕けた笑顔でどーしよっかなぁ、とふざけて返してきたので横腹を殴ってやった。
お昼ご飯をゲットして教室に帰ろうとしたら、いきなり手を捕まれ、教室と反対方向へ連れていかれた。

｢ちょっと、なに？！｣
｢えー、内緒｣
｢ねぇ！藤井君！｣

振りほどこうにも、男のひとの力には敵わない。引っ張られるがままついていくしか無くなった。文句をいいながら歩くと向かった先は、屋上だった。でも屋上には鍵がかかってるはず。ここ入っちゃ駄目だよと言うと、うーん、と言いつつ鍵をガチャガチャしているとすんなり開いた。

｢え、開くの？｣
｢ここただ鎖巻いてるだけやねん、とりあえず生徒が入らんようにって。見せかけの鍵｣
｢ばれたら怒られる｣
｢んー、そしたら、｣
｢？｣

すると藤井君は耳元で、共犯やね、なんて言うから恥ずかしくなって。下を向いた。すると藤井君は満足したのか笑って、私の手を引き、俺らの秘密基地～♪なんておかしな歌を歌いながら屋上へ引っ張っていった。

｢藤井君て変な人だね｣
｢なんでやねん｣
｢なんか、掴めないというか天然というか｣

メロンパンをかじりながら真剣な眼差しでこっちを見てくる藤井君。イケメンがメロンパンって、ギャップがすごくて笑えてきた。

｢なに笑ってるん？｣
｢いやぁ、凄い顔がイケメンなのに、どっか抜けててすごい面白い｣
｢ばかにしとるやろ｣

してないよ、って笑いながら答えると睨んできた。でもメロンパンかじってるから全然怖くない。むしろ面白い。

｢Aは優しいよなぁ」
｢ふふ、そうでしょ｣
｢あとすぐ調子乗るし、ばかであほ｣
｢褒めてから貶すのが早い｣
｢俺なりの愛やで｣

なんてキメ顔で言うから余計面白くなった。藤井君て顔に似合わずユニーク。仲良くなれそう。

ふと、校庭に目をやると、見知った後ろ姿があった。大友だ。野球場の方へ行くみたい。なんでだろう？すると、野球場のベンチの方へボールを投げた。なげたボールが帰ってくる。嫌な予感がした。見たくないと思いつつ、目が放せなくなった。大友が近くのベンチへ座ると、少し時間をおいて出てきたのは、夏芽ちゃんだった。

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