9 くるしゅうない ページ10
私が褒めると瑠衣の顔はパッと明るくなり、さっきより随分高い声で話し出す。
「えほんと？いやこの間美容院行ってちょっと刈り上げちゃってさ、まさかその3日後に別れ話されるとは誰も思ってないじゃん？それでずっとこれ気になってたんだけど買えてないの思い出してポチっちゃった。久しぶりの女の子だからコスメとかも……あ、そうだおにぎりは？」
今の話でどこにおにぎりを思い出す要素があるのか全く分からないが、とにかく私は手に下げていたビニールをそのまま渡す。
すると中身をガサゴソと確認した瑠衣は「よろしい」と言って早速おにぎりを開封し始めた。
『ま、お酒もいっぱい買ってきたことですし…ささ、どうぞどうぞ…』
そう言って缶ビールのフタを開けて渡してやると瑠衣はにんまりと笑った。
「んふふ。くるしゅうない。」
もう1本私の分を開けると、コツンと缶同士をぶつけて2人同時にビールに口をつける。その後美味しそうにおにぎりを頬張る姿からして、どうやら瑠衣の機嫌も治ったようだ。
そうこうしているうちにCMも明け、中継先にいるアナウンサーが喋り始めた。
『ね、爆豪くん次いつ？』
「うーん…あ、もう始まってるかも。1年生だよね。このチャンネル3年のだから。」
『え！？ちょっと！早く変えて！』
「はいはい、ほらそれ取って。」
瑠衣が指差す先のリモコンを素早く取って手渡すが、焦る私とは裏腹に瑠衣は何チャンだっけなと悠長にボタンを押していくので焦ったい。
何回目かでようやく1年生のチャンネルになると、画面には生徒たちではなく、番組の司会者とコメンテーターの数人が今後の展開を予想していた。
《第二種目は騎馬戦という事になりましたが…》
「へぇ騎馬戦なんだ。いいね！盛り上がりそう。」
『うわぁ懐かし〜。』
画面右下の枠には、体育祭の中継が小さく映し出されている。どうやら生徒達は誰とチームになるか決めているらしい。爆豪くん早く出ないかな。
《第一種目の障害物走を見て、みなさん次に注目するのはどの選手でしょうか？〇〇さん。》
すると、ヒーロー研究家の〇〇さんは淡々と語り始めた。
《そうですね私はやはりNo.2ヒーロー、エンデヴァーの息子の轟選手に期待しています。やはり…》
すると、障害物走のリプレイが流れだす。あ、この紅白頭の子、轟くんっていうのね。…てか、
『まって轟くんイケメン。』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：フェイル | 作成日時：2023年4月22日 20時
