4. 釘付け ページ5
“雄英高校1年A組 爆豪勝己”
ばくごう、まさき？かつき？かつみ？
……なんて読むのかなこれ。最近の子の名前は難しい。
『あ、やべ。』
記事に夢中になっていたらラーメンはすっかり出来上がっていた。私は最後に加薬を入れると、箸とラーメンを持って食卓に移動する。
『いただきまーす。』
立ち上る湯気と、鼻をくすぐる味噌と唐辛子の香りに食欲がそそられる。美味しそう。
お腹を空かせた私は、箸で麺を掴み取ると勢いよく口に運ぶ。
『ん〜！辛うまぁ〜！』
期待を超えた美味しさに私の口は止まる事なく麺をすすり続ける。これはリピート決定だわ。なんて思いながら、つけっぱなしにしていたテレビに目をやる。
画面の右上には“第一種目 障害物走”と出ている。
『あ！』
映っていたのは爆豪くんだった。
手から爆発を起こして凄まじいスピードで一位との間ぐんぐんを詰めていく。わーお、派手な個性。
《ここで先頭が変わったぁぁぁあ！！！喜べマスメディア！お前ら好みの展開だぁぁ！》
会場の中継に切り替わると、観客たちは大いに沸き立っている。
丁度その爆豪くんが先頭に立った場面だったようで鮮やかに先頭だった子を抜いた身のこなしに、私も思わず、おぉと呟いてしまった。
すごい。優勝宣言するだけあって、やっぱり実力があるんだなあ。というか、雄英体育祭をこんなにちゃんと見たの初めてかも。
体育祭か、懐かしいなぁ…なんてのんきに麺を貪っていると耳に再び実況の声が入った。
《A組みどりやぁぁぁぁ！！爆風で猛追ぃ！！っつーか抜いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ！！！！》
板のようなものに乗って、猛スピードで飛んできたのは緑色の髪の男の子だった。
あまりにも突然の出来事に私はテレビに釘付けになる。ヒーローに興味が無い私がヒーローの卵達の戦いに熱中しているなんて、自分でも驚きだ。
トップに出てきた緑谷くんを追いかける、爆豪くんと紅白頭の子。
この熱く面白すぎる展開に私はいつの間にか箸を置いて、テレビに釘付けになっていた。
すると、血相を変えた爆豪くんの顔がアップで映し出される。
《デクぁ…俺の前を行くんじゃねぇ！！！》
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作者名：フェイル | 作成日時：2023年4月22日 20時
