歯医者さんと勝己くん【爆豪勝己】 (ページ4)

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冷蔵庫にあるのは、ビールと昨日食べ残したチーズやイカの塩辛などのおつまみくらいだった。

どうしよ、今からスーパー？

うーん、面倒くさい。今日は家から一歩も出たくない。

…出前？えーでもお腹空いた。今食べたい。

『あ、そうだ。』

どうしようかと頭を悩ませていると、先週たまたま買っていたカップラーメンの存在に気がついた。

冷蔵庫をバタンと閉めると今度は、食料棚をゴソゴソと漁る。

『そうそう！これこれ！！』

黒を基調としたパッケージにはデカデカとした“地獄の辛さ”の文字と、真っ赤なスープからつやつやとした麺が顔を覗かせた何ともまあ美味しそうな写真。
早速蓋を開けて、スープの粉末とお湯を入れた。

3分待っている間にスマホでニュースをザーッ確認する。

こっちも体育祭の記事多いな…そりゃそうか。なにせオリンピックに匹敵するような一大イベントである。メディアが大きく取り上げるのも当たり前だ。どんどんスクロールしていくと、ある見出しに目が止まった。

私は世間一般からすれば少数派の人間でヒーローというものにあまり関心が無い。もちろん、彼らがいるおかげで平和が保たれている事は分かっているしありがたいのだが、自分も含め、周りに危険が起きた事がないからか遠い存在というか、それこそ特撮ヒーローのような“テレビの中の人達”としか思えないのだ。

だからそんな私が目についた見出しは珍しいものだった。

　“「俺が1位に」宣誓で優勝宣言に大ブーイング”

まあ、目についた理由は“大ブーイング”というインパクトがある言葉に惹かれただけなのだが、興味本位で記事を開く。

記事の内容は選手宣誓に選ばれた生徒がそこで誓いの言葉ではなく優勝宣言をしたというものだった。そしてその代表の生徒に腹を立てた他の生徒達が大ブーイングを起こしたらしい。

はは、なんじゃそりゃ。アメリカかここは。

しかも、ブーイングに対して男子生徒は《せめて跳ねのいい踏み台になってくれ》……ってマジか。ヒーロー志望の子でもそんな事言うんだ。

記事を読み進めると、優勝宣言を放ったその少年の画像も添付されていた。おお、確かに気が強そう。

画像の中の少年はポケットに手を突っ込み、真剣な表情でマイクの前に立っていた。そしてその写真の下には彼の名前らしきものが書かれていた。