歯医者さんと勝己くん【爆豪勝己】 (ページ21)

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20. 爆発の爆に豪快の豪ページ21

受話器を急いで拾い、もう一度耳に当てる。

『申し訳ありません…！』

するとおかしい

何も聞こえない。

もう一度言う。この時の私はパニックに陥っていた。

『もしもし、もしもーし……

………あっ』

なんと耳に当てていたのは右手に持っていたボールペンだったのだ。

私は急いで左手の受話器を当てる。

『大変申し訳ありません！もう一度よろしいですか？』

［爆発の爆に………］

その後、私がどうやって予約を取り付けたのかは分からない。いつの間にか通話は終わっていて、予約表の14時の欄に“爆豪光己”の名前だけ残されていた。

爆発の爆に豪快の豪……

ああやって自分の漢字説明するんだ……

『………………………………。』

『院長………。院長……院長…院長…院長院長院長院長院長！院長！院長！いんちょー！！！！！』

私はそう叫びながらスタッフルームにダッシュした。
みんなはあっけらかんとした顔で私も見ている。

「どうしたんですか？！A先生！！」

神妙な面持ちの私を見て、只事じゃないことを感じているのか、さっきまで和気藹々としていたこのスタッフルームが今では緊迫したものに変わっていた。

『どうしたんですかじゃないです緊急事態です。爆豪くんのお母様がこちらにいらっしゃいます。』

「へ？爆豪くんて……昨日の雄英の？」

「うそぉ！あの優勝した子よね？」

「こんなタイムリーな事あるんだな…。」

この緊急事態に部屋全体がざわつき始める。
仲院長も興奮を抑えきれないという様な表情で、私に問いかけてくる。

「それは本当ですか？！」

『…と、思います。爆豪光己さんと言う女性からご予約の電話を頂いたんです。爆発の爆に豪快の豪に光る己と書いてばくごうみつきですよ？！！彼と一文字違いです…。絶対お父様の名前に“勝”って入ってるじゃんっ！！！！爆豪勝己じゃんっっっ！！！！』

この奇跡に正気でいられようか。私は部屋の隅の壁に挟まれる事でしかこの興奮を抑えられなかった。

「ち、ちなみにいつ？」

『今日！！！！！14時！！！』

「マジか。俺……サイン貰っとこうかな」

「私も貰おうかしら…」

「クリニック用にも1つ書いてもらいましょうねぇ！」

『良いですねそれ！』

「え！まって？！なに？！母の？！？」

サクラさんのツッコミも虚しく、仲歯科クリニック一同は未来のトップヒーローの母上が来院するという事実に浮き足立っていた。