18. サクラさん ページ19
『今ちょうどその話をしてたんですよ！』
「Aちゃんは1年の爆豪くんが推しなんだって」
「えーそうなの？なんかあの子ヒーローっぽくないじゃん。」
『サクラさん…爆豪くんの歯を見てみてください。あれはもう芸術ですよ…！』
サクラさんも歯科衛生士の1人。大学は違うけど、池田先輩と同い年で私の２つ上。いつもお洒落で我が道を行くカッコいい女性。私は彼女のハスキーな声が大好きだ。カラオケの十八番は椎名森檎。かなり似てる。
「そうかAちゃん歯フェチだもんなー。」
『この仕事は天職です〜。』
私は髪の毛をまとめ終えると、荷物をまとめ、ミキさんの後を追うように更衣室から出る。
「じゃあサクラちゃんお先にー。」
『あと5分もないですよー。』
「はいはーい。すぐ行きまーす！」
更衣室から出ると、他の人達は既に朝礼前の雑談を始めていた。私とミキさんもロッカーに荷物を置くと、その輪の中に入った。
今日のメンバーは
医師の仲院長、池田先輩、私。
衛生士のミキさんとサクラさん。
助手の佐々木さんと矢口さんの7人だ。
ウチは基本的に7人〜8人体制で回す。
大きなクリニックじゃないけど、このアットホームな雰囲気が私にとても合っている。
「いやぁ…にしても昨日は熱かったですねぇ。やっぱり今年の1年生はオールマイトの指導があるからレベ──」
「今年はこの院長の体育祭の話、いつまで続きますかね？」
私は先輩に耳打ちすると、さあなと返ってきた。
「こっからが俺らの体育祭ってわけよ」
『そういうことか…』
こんな感じで私達は8時半の朝礼まで何でもないお喋りをする。内容は日によってバラバラで、仕事の話をする時もあれば、今日みたいな世間話を延々とする時もある。
そこへ最後のサクラさんが入ってきたので、私達は自然と静かになる。
「お、川井さんおはよう。ぴったり時間ですね。じゃあ今日の朝礼を始めていきます……」
朝礼では、今日の患者さんの情報や予定などを確認する。全体の朝礼が終わると、今度は医師だけで集まって、患者さんの治療計画を立てたり、症例の相談したりする。
その間、他のスタッフには器具の準備や掃除をしてもらい、9時から診療がスタート。
…というのがうちのクリニックの流れだ。
『ようし！今日も頑張っちゃうぞ〜』
「A先生、気合い充分ですねぇ。さらに向こうへ…！」
『「Plus Ultra ーー！！」』
「2人とも今日そのテンションで行くんすか？」
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作者名：フェイル | 作成日時：2023年4月22日 20時
