歯医者さんと勝己くん【爆豪勝己】 (ページ15)

今日:9 hit、昨日:0 hit、合計:3,559 hit

14. カッコいいページ15

『ふーん。良い試合だったけどなあ…。』

色々理由を考えてみたけど、実際のところは本人達しか分からない。でも、どの瞬間を切り取っても本気で、有言実行を果たしてしまった爆豪くんに私は賞賛を送りたいし、他の人も同じ気持ちだと思う。

彼自身、納得いかない結果なのだとしても、こうして感動を貰えた事には変わりないし、人々に感動を与える事もヒーローの仕事のうちなのだと思った。

彼はきっとすごいヒーローになる。

結果はもちろん、彼にはそう感じさせる魅力が確かにあった。

「ま、いつか爆豪クンの歯が実際に拝めるといいね。」

『うん。ねぇ、あのさ…………ヒーローってカッコいいんだね。』

こんなにもヒーローを応援したいと感じたのは初めてだった。でも爆豪くんや他の子供達にこんなにも夢を与えているヒーローという職業は素晴らしいなと、今日強く感じた。

『ヒーローのこともっと教えてよ瑠衣。』

私の思いをそのまま吐き出すと、瑠衣は何か返事をする事もなく、真剣な眼差しを向けてくる。

なぜか私も目が逸らせない。

そうすること数秒、ようやく瑠衣の口が開かれる。

「今……すごい嬉しい………。ちょっ、ちょっと待ってて！！！」

そう言い捨てると、瑠衣はドタドタと隣の部屋に行ってしまい、何やらガサゴソとやっている。どうやらヒーローについて教えるにあたって何か用意しているらしい。

そこまでしなくても……まあいいか。

「僕に任せてA！！今から教えるから！！！」

ヒーローに今まで全く興味を示さなかった私がこうして関心を持っていることが嬉しいのだろう。瑠衣の声が何だか楽しそうだ。そんな瑠衣の様子に私もまたニヤけてしまった。

隣の部屋からの呼びかけに、はーいと返事をして、干イカを一本口へ運ぶ。

TVに意識を戻すとメダル授与式が始まったばかりだった。

『あ！瑠衣！！オールマイト出てるよ！！！』

「えっ、やばい忘れてた！ちょっと待って！！！」

それから生中継が終わると、瑠衣のヒーロー講座が始まり、結局深夜を回ってしまった。
珍しく酔った瑠衣はまだ語り足りなさそうだったけど、明日はお互い仕事があるので、ぐちぐち文句を言われつつも瑠衣の家を後にした。