12. 騎馬戦 ページ13
まだ種目は始まっていないというのに、画面越しでも伝わってくる観客の熱気。
「うわぁ盛り上がってるね〜いいな〜」
『瑠衣は会場のチケット取らなかったの？』
率直な疑問を投げかけると、瑠衣は眉をハの字にして呆れたような声を出す
「簡単に言ってくれるけどさ…倍率すっっごいんだから！死ぬまでに1回当たれば奇跡なくらいなの！わかる？！」
『わかったわかった！よーくわかった。軽はずみな発言でした！』
再び瑠衣の機嫌を損ねまいと、炎が大きくなる前になだめる。まったくもう、と真剣な顔で呟く瑠衣が少し可笑しくてついニヤけてしまう。可愛くて仕方ないのだ。
普段はわりかし落ち着いている瑠衣がヒーローの事となるとこれだけ興奮するのは、子供の頃に事件に遭遇したことがあり、ヴィランと戦うヒーロー達を見たことがきっかけらしい。ちなみに瑠衣の初恋はその時に駆けつけたヒーローのうちの1人だったようだが、だいぶ昔に引退してしまったそうだ。
チーム決め終了まで残り5分を切ったTVに映るカウントダウンを見てボーッとしていると、瑠衣に名前を呼ばれた。
「ねぇ、A。この騎馬戦、ただの騎馬戦じゃないみたい。」
『え？』
そんな事を言われても“ただの騎馬戦じゃない”騎馬戦なんて想像できないのだが…？
頭にハテナを浮かべる私に瑠衣は簡単に説明してくれた。
『ほう…つまり、みんな狙いは…』
「1000万ポイント持ってる出久くんってことになるね」
『えぇそんなのあり？！』
「戦略が重要だね…。面白そ〜！」
試合開始が近づくごとに熱気を上げる客席。
もうほとんどの選手が騎馬を作っている様子が確認できる。残り1分を切ると、私も緊張と興奮が入り混じり、ソワソワしてきた。
《さァ上げてけ鬨の声！！血で血を洗う雄英の合戦が今！！狼煙を上げる！！！！》
観客が盛り上がるなか、数秒だけ画面に爆豪くんが映った。
『あ！え！爆豪くん上だ！！！しかもみて、切島くんと一緒じゃない？！』
「ほんとだ！2人とも髪の毛とげとけでかわい…あ！電気くん！！！」
『わ！紅白王子と一緒じゃんか！』
「轟くんね」
次いで、その他の騎馬も画面に映されていく。最後の騎馬が映ったときには、開始10秒を切っていた。
《…行くぜ！残虐バトルロワイヤルカウントダウン！！》
温まっている会場が、実況に合わせてカウントダウンを始める。
《3‼︎‼︎ 2‼︎ 1…!》
《スタート！！！！！！》
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作者名：フェイル | 作成日時：2023年4月22日 20時
