だから、痛いってば。

謝罪 ページ20

,


「…とりあえず、もう少し詳しく診て治療方法を探して見ますので、日曜日まで預からせて下さい」


「わかりました…ありがとうございます。本当に」


「…あまり、心配しすぎないでくださいね。」





元気さんが少し微笑んでくれたような気がしたけれど、私は上を向くことができなかった。


噛んだ唇からは血の味がして、それがなんだか不愉快だった。








,





トミーは私よりも随分前に家に戻ってしまっていた。



なんせ、相方が私を庇い階段から転げ落ちて記憶喪失になったんだから。


しかも、自分ではなく元凶の私の名前だけしか憶えてないんだから、無理もない。




でも、謝らなくちゃ。


私のせいで、カンタが危ない目にあってしまった。



今日の動画もまだ撮っていないし、トークライブだって中止になるかもしれない。


私一人のせいで、みんなに迷惑がかかってる。


これじゃあまるで、昔のまんまだ。




家に帰ると、トミーはいつものリビングにもキッチンにもいなくて。



ドアをノックしてからトミーの部屋を覗いてみると、案の定ベッドでうつ伏せ状態だった。


どうしよう。そうとう落ち込んでそう…私のせいだけど、

あまりカンタっていうワードは出さない方がいっか、、




「あ、あのねトミー、すぐなおるかもしれないから、日曜日までは元気さんが預かって見てくれるって。

酷い怪我とかはあんまり無いらしくて」



すぐ治るなんて、誰が言ったの。

トミーをこれ以上落ち込ませたくないからって話を盛ってしまうことにすぐ後悔する。




「本当、ごめんね。私のせいで。

動画とかトークライブとか視聴者さんにも迷惑かけちゃうし、トミーにだって、」



「出てけ」




え？



聞き間違いかなと思ったけれど、トミーは間違いなくもう一度


出てけ


と復唱した。



「うん。ごめんね」





ドアの外で、ただ一人。


涙が止まらなくて、滝みたい。



,

過去*暴言あり、微過去編→←記憶

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す