第６話 翌朝 ページ8
「おはよう、A。
起きろよ朝だぞ。」
まだ日も昇らない早朝、聞き慣れた声で起こされた。
「ん・・・、なに？
僕、こんな目覚まし時計知らない。」
毛布から出した手で、うるさく喚いているものをぺしべしと叩く。
「こら、俺は目覚まし時計じゃない。
さては寝ぼけてるな？」
叩いていた手を握られたかと思ったら、引っ張られて強制的に上半身を起こす羽目にになった。
気の抜けたあくびが出る。
「こんな朝から、僕に何の用？」
「日本に行くんだろ？
それじゃあ早いほうがいいと思ってな。
今から一時間後の飛行機を予約しておいたから。」
予想の斜め上をいく言葉に、思考が止まった。
「は！？無理でしょ。
だいたい荷物もつめてないのにーーー」
「荷物なら俺がつめた」
「・・・？
悪い。
何だか今日は疲れているみたいだ。
幻聴が聞こえる。」
再び横になろうとすると、止められた。
「まだ起きたばかりで疲れなんて無いだろう。
あと、幻聴じゃなくて、俺は事実を言ったまでだ。」
「ちょっと待ってよ。
それじゃあ、僕の下着とかも入れたってこと？」
「ああ、もちろん荷物に入れておいたが。
だって、もし入っていなかったら困るだろう？」
ぞわわ、と鳥肌がたった。
「なんで僕の下着のある場所知ってるのかとか、
なんで隣の部屋に別れて住んでるのに僕の部屋に入れたのかとか、
色々気になるけどとりあえず
リチェって、デリカシーの欠片も無いんだね。」
「え、なんで俺罵倒されてるの！？」
むしろ感謝されるべき！などと言っているのを無視して、顔を洗い、手早く着替える。
こういう時、寝癖のつきにくい髪質で良かったと思う。
準備されていたキャリーケースとカバンを持ち、リチェレッタと向き合った。
「それじゃあリチェ、行ってきます。」
「ああ、行ってらっしゃい。」
「日本から帰ってきたら、どんな役でも演じられるようになるから。」
「期待してるよ。
ただ、それがお前の最終目標でない事は覚えておけ。」
いつになく真剣な声色で言われた。
「分かってるよ。」
目標を達成する日は果たして訪れるのか、期待と不安を胸に抱きながら旅立った。
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るろまる(プロフ) - フィーアさん、コメントありがとうございます。ノンビリですが更新していきたいと思っています！ 感想、とても嬉しかったです！ (2017年1月12日 12時) (
レス) id: 6d0c896ab0 (このIDを非表示/違反報告)
フィーア - とても面白かったです！！！更新頑張ってください！！ (2017年1月9日 17時) (レス) id: 65845fd388 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るろまる | 作成日時：2016年12月11日 22時
