第１話 少年 ページ3
小鳥がさえずり、緩やかな風が吹いて葉を揺らめかす。
優しい木漏れ日を受けて森の中で寝る少年が、億劫そうに目を覚ます。
少年は辺りを見渡し、ゆっくりと森の出口へ足を進めた。
ここは、そんな温かな世界とは反対の、冷たい氷の上。
キン、とした空気の中で、水を得た魚のようにのびのびと滑る少年がいる。
優雅に指先を動かし、小鳥たちと戯れるかのように楽しげに微笑んだ。
角度によって青みががる髪は、まるで風を受けているかのようになびく。
小鳥たちが飛び立ち森の出口につくと悲しげな顔をして俯く、と同時に流れていた曲が終わる。
静寂が支配する中で、少年は顔をあげコーチの元へ滑る。
「はぁ・・・
俺の滑りは、どう、でしたか？」
大きな目に、わずかな不安を乗せて問う。
「上出来だよ。
まあ、ジャンプ決まった後の気の緩みをどうにかしないとな。
一瞬だけ脱力しただろ。」
その言葉にしゅん、と肩を落とす。
「うぅ・・・。
分かりました。」
「明日から、気をつけて滑ればいい。
今日の練習は終わりにしよう。」
「は、はい。
本日は、ありがとうごさいました。」
眉をハの字に下げ、しょんぼりとしていると、ベンチに置いてあった携帯が鳴った。
「ほらよ。」
「あ、ありがとうごさいます。」
とってくれたコーチに素直に礼を言い、携帯を耳にあてる。
『やあ、A。
今は練習中かい？』
聞こえてきた声に、頬を緩める。
『ヴィーチャ！
ふふ、久しぶりですね。
今、練習が終わったところなんですよ。
どうかしたんですか？』
にこにこと朗らかに話していると、ヴィクトルの雰囲気が変わった。
『・・・A、リチェに変わってくれるかい？』
幾分か声のトーンが低くなったことを不思議に思いながら、なぜか冷や汗をかいているコーチに携帯を渡す。
『あー、その・・・なんだ。
ひ、久しぶりだなー、ヴィクトル。』
『リチェ、 分 か っ て る よ な ？』
『ああもう！！
分かってるよ！』
おもむろに、首を傾げて見つめるAの手を握る。
『Aに、戻せばいいんだろ？』
すると、自信なさげで控えめだった少年が空気に溶けていき、苛だたしげにこちらを見つめる青年がいた。
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るろまる(プロフ) - フィーアさん、コメントありがとうございます。ノンビリですが更新していきたいと思っています！ 感想、とても嬉しかったです！ (2017年1月12日 12時) (
レス) id: 6d0c896ab0 (このIDを非表示/違反報告)
フィーア - とても面白かったです！！！更新頑張ってください！！ (2017年1月9日 17時) (レス) id: 65845fd388 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：るろまる | 作成日時：2016年12月11日 22時
