#07 始まりの合図 ページ7
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「エイジありがとう。」
エ『ん。』
「嫌いになりそうだった夏祭りがいちご飴のおかげで大好きに戻ったよ」
夏は夏祭りだけが楽しみなんだって彼女は笑う。さっきまでの笑顔とは全然違くて、いつも通りの太陽みたいな笑顔だった。
エ『俺の兄貴も見る目ないね』
「っは?!」
エ『まさかバレてないと思ってたの?』
「なんで?!私そんなわかりやすい?!」
エ『兄貴くらいじゃない?気付いてないの。』
はぁ〜とため息を漏らしながら彼女は言う。
私結構いいポジションだったんだよと。
いつものペースが取り戻されつつある彼女だが、顔にはしっかり涙の跡が残されていて、俺は気付かないふりをしたんだ。
エ『来年は一緒に牛串食べようぜ』
「いいね、そうしよ。あとベビーカステラも」
エ『そこはいちご飴じゃないの?笑』
「知らないの?私ベビーカステラが一番好きなの。」
エ『しるか、ばーか。』
遠回しに言った“来年”の意味を彼女は理解しているのだろうか。嬉しそうにピンクのそれを取り出すと、ジャリっと音を鳴らした。
「う〜ん!甘くて酸っぱくて最高!」
エ「食レポ向いてなさすぎ」
「うるさいなー。エイジに貰ったからいつも以上に美味しい!」
ニヤリと彼女が笑うもんだから、彼女の右手を手に取りそのままキラキラ光るいちごの飴を一口食べた。
一瞬ぽかんとした表情をした彼女だったが、すぐに状況を理解して
「間接キスだ」
なんてあっけらかんと笑う。
まるで俺を男として見ていないと言わんばかりに。
──────彼女への長い片想いが始まった合図だった。
中二の俺は愛してるの意味も分からず、ただ真っ直ぐにあなたの事が好きでした。
今俺が過去の自分に声をかける事ができるのならば、もっと上手くやれよって笑いかけるであろう。
いや、大人とされる年齢になった今でも愛してるの意味がわかったか?と聞かれれば俺はなんと答えるのだろうか。
今でも君のことを、ただ真っ直ぐに。昔と変わらず好きだと言ったらあなたはどんな顔をしますか…?
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作者名:あや | 作成日時:2019年5月26日 23時