#0812

31 ページ31

.





エイジの手が私の頬に触れ、優しく撫でる。
痛くない程度に優しく、私の頬を摘み






エ『俺、勘違いしちゃうよ…？』





いつもみたいに茶化してるエイジとは違う、どこか色っぽいエイジに私は動けなくなった。





そのまま動けなくなった私を見て、エイジはクスリと笑い私をぐっと引き寄せる。
一気に身体中エイジの香りに襲われて、今にも目が回りそうだ。





あぁ…このままエイジに…




なんて呑まれそうになった時、私の目にはあの光景…エイジの腰に手を回す女の人が浮かんだ。





エイジの顔がまた近くなった頃、ようやく動いた私の体はエイジの胸を押した。





エ『…ん？』





優しく首をかしげるエイジ。
その顔を見ないように、私の声が届くようにエイジの前に座りなおす。






「私…みちゃったの…」




どくんどくんと心臓が鳴る。





今私の目の前で私でもわかるくらいに愛おしそうに見つめる君は…





────── 一体誰を想っているの…？





エ『見たって…？』

「エイジとそらが女の子と遊んでる写真」

エ『……』

「…彼女…でしょ…？」





やっと気付けたこの感情は、報われることなく消えていく。エイジの事が好きと気付いたらどんどん溢れるこの感情をうまくコントロール出来ない。





エ『…ごめん…』





溢れ出る涙は止まることを知らなくて、どんどん流れていく。こんなはずじゃなかった。
こんなことになるならこんな感情気付かなきゃよかった。









.

32→←30

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す