初恋の行方3*Junho story*under ページ24
私を乗せた車は緩やかに走り出す。
助手席の窓から見える景色は、見慣れたソウルの街並みのはずが何故か冷たく見えた。
そして頭の片隅で私は静かに思う。
私の知らない誰かがきっとこの席に座り、今の私と同じようにこの街並みを見ていたのだろうと。
彼女が見たこの景色は、きっと色鮮やかで輝いて見えたはずだと。
そんなことを考えること自体無意味で在ることも、そんなことを考える資格も無いこともわかっていた。
それでも考えずにはいられなかった。
ねぇ。
ジュノ。
何で今日あの店に来たの!?
貴方にとっては懐かしい友人に会いに来た、只それだけかもしれない。
だけど私は違う。
私にとって貴方は特別なの。
溢れ出しそうな想いを。
口に出せないこの辛さを痛いほど感じながら、私はきつく、ひたすら唇を噛み締めた。
今日が過ぎ去れば、ジュノの中にも昔のままの私だけが残る。
ジュノの前で醜くなりたくない。
その一心だけが、今の私を必死に支えていた。
長い長い沈黙が酷く恐ろしい。
車の中は嫌でもジュノの存在を感じるし、ジュノがどんな表情をしているのかも私は確めることができず。
ただジュノの指がステアリングを滑らせる音と、時々聞こえてくるウィンカーの音がやけに大きく聞こえてきて。
私は噛み締めていた唇を再びきつく噛み締め直し、前だけを見つめることしかできずにいた。
何度目か分からないウインカーが出された後、車は車道の端にゆっくりと停められた。
闇夜の静寂を破ったのはジュノの方だった。
『A』
ジュノがサングラスを外して私の名前を呼んだ。
それでも私はジュノの顔を見ることができない。
『A。なぁ、こっち向けって』
私は前を向いたまま、黙りこむ。
だけど鼓膜に届くジュノの声が思いの外、優しいから。
勘違いしそうになる私を自分で叱咤しながら、どうにか彼に抗うのが精一杯だった。
『ごめん』
聞こえてきたジュノの小さな謝罪。
『あの日、学校休んでごめん。Aに会えるのがあの日で最後だと知っていたら、俺休まなかった』
ポツリポツリと話出すジュノは、テレビで見る自信で満ち溢れたジュノの姿ではなく、母親に許しを請う子供のようだった。
ジュノが今日私に会いに来た理由が分かった瞬間。
私はシートベルトを外し、ドアのロックを素早く解除してジュノの車から飛び降りた。
私がジュノを想い続けてきた10年間。
それは。
彼を呵責の念で縛り続けていた時間だった。
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エイジ(プロフ) - 月花さん» お返事遅くなりましてすみません。オーラスから未だ感情が上手く整理出来ずにいます。ひたすらテギョン一色で書き綴った一話でしたが、しがないオクッパの心の内をさらけ出してしまいました。私が次にテギョンに会えるのはドーム。この目にしかと彼を焼き付けてきます。 (2016年7月17日 1時) (レス) id: d1cda00c22 (このIDを非表示/違反報告)
月花(プロフ) - 久しぶりにエイジさんのお話が読めて嬉しいのと、このお話はテクペンのエイジさんだからこそのお話だなぁと思いました。その距離も関係性も分かってはいるけど、時折辛くなりますよね。店員さんが何を言ったのかが、気になります。切ないけど素敵なお話有難うございます (2016年6月2日 16時) (レス) id: 2db226cba0 (このIDを非表示/違反報告)
エイジ(プロフ) - じゅんたさん» コメントありがとうございます(*^^*)余りにおひさしぶりの更新ですみません。まだまだ、書きたい気持ちはたくさんですので、のんびりとお付き合いいただけると嬉しいです!! (2015年12月2日 18時) (レス) id: 9c27d96a79 (このIDを非表示/違反報告)
じゅんた(プロフ) - 久しぶりのエイジWorld堪能しました。ありがとうございます(人´∀`) (2015年12月2日 6時) (レス) id: 017662d541 (このIDを非表示/違反報告)
エイジ(プロフ) - りえぞうさん» コメントありがとうございます。嬉しいです、オクッパ同士ですね♪これからも、テギョン溺愛で行きますので、また遊びに来てくださいね!!私も、初めまして♪こんばんは♪(*^^*) (2015年8月16日 23時) (レス) id: 9c27d96a79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エイジ | 作成日時:2015年6月7日 22時