今去りし男（ひと）1＊Taecyeon story ページ1
彼の身体が私を知り尽くすほど抱いて。
私の身体は彼を覚えるほどに抱かれる。
だけどそんな行為にいつしか生じはじめた、埋められない溝。
本来なら溝を埋めるために重ねるはずの行為が。
いつの間にか二人の更なる溝を深めていった。
それでも、止むことの無かったその行為は何度も繰り返されていく。
そして溝は亀裂を生みながらも必死に耐えていた。
いつか、その溝を埋めてくれる何かが二人の間を繋ぎ止めてくれることを。
それが、何なのか。
二人には解っていた。
だけど、もう手遅れなほどに離れてしまった心を繋ぐものなど二人には残されていなかった。
ただ一つを除いては。
だからこそ、繰り返されていく行為。
そして深まる二人の溝。
それでも、同じ場所に留まっていたのは何故なのだろうか。
彼も私も疲れ果てていたのに。
愛することもにも。
愛されることにも。
抱きしめることにも。
抱きしめられることにも。
互いに向き合うことを恐れて
気づけば交わす言葉もなく。
身体だけを繋ぐ日々。
だけど、そんな日々は痛々しいまでに互いを傷つけていった。
そして私は気づいた。
彼に抱かれた後から。
一つずつ無くなっていく物に。
彼が読んでいた雑誌。
彼が気に入って買ったグラス。
彼が使っていたミドルエプロン。
彼が着ていた部屋着。
彼が聞いていたレコード。
それらは、彼がこの部屋に持ってきた順に無くなっていった。
私はその意味に気付いていた。
だけど、もう戻れないことも知っていた。
だから、次に彼が来る日が最後の瞬だということも解っていた。
そして、最後の夜は訪れた。
ベッドの上で優しく抱かれた私は泣かなかった。
だけど、バスルームで激しく抱かれた私は、隠す事なく泣いた。
彼もまた、濡れた瞳で私を抱いていた。
彼に身体を拭かれ、ベッドまで運ばれた。
そして、最後の想い出となる彼自身がこの部屋から無くなった。
そうして互いの溝は埋まり、全てが元に戻った今。
痛めた心は深い深い闇の中へと消えていき。
私はようやく眠ることができた。
目覚めた私を待っていたのは。
新しい朝で。
輝かしく晴れている訳でもなく。
土砂降りな雨が降っている訳でもなく。
ただ雲が流れていた。
そして。
その雲が辿り着いた錆びた色が私を迎えに来た夜。
私は玄関のドアを閉めた。
そして知る。
このドアはもう二度と私以外の誰かが開けることはないのだと。
ーーーテギョン。
ーーーさようなら。
ーーー愛してたよ。
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エイジ(プロフ) - 月花さん» お返事遅くなりましてすみません。オーラスから未だ感情が上手く整理出来ずにいます。ひたすらテギョン一色で書き綴った一話でしたが、しがないオクッパの心の内をさらけ出してしまいました。私が次にテギョンに会えるのはドーム。この目にしかと彼を焼き付けてきます。 (2016年7月17日 1時) (
レス) id: d1cda00c22 (このIDを非表示/違反報告)
月花(プロフ) - 久しぶりにエイジさんのお話が読めて嬉しいのと、このお話はテクペンのエイジさんだからこそのお話だなぁと思いました。その距離も関係性も分かってはいるけど、時折辛くなりますよね。店員さんが何を言ったのかが、気になります。切ないけど素敵なお話有難うございます (2016年6月2日 16時) (レス) id: 2db226cba0 (このIDを非表示/違反報告)
エイジ(プロフ) - じゅんたさん» コメントありがとうございます(*^^*)余りにおひさしぶりの更新ですみません。まだまだ、書きたい気持ちはたくさんですので、のんびりとお付き合いいただけると嬉しいです!! (2015年12月2日 18時) (レス) id: 9c27d96a79 (このIDを非表示/違反報告)
じゅんた(プロフ) - 久しぶりのエイジWorld堪能しました。ありがとうございます(人´∀｀) (2015年12月2日 6時) (レス) id: 017662d541 (このIDを非表示/違反報告)
エイジ(プロフ) - りえぞうさん» コメントありがとうございます。嬉しいです、オクッパ同士ですね♪これからも、テギョン溺愛で行きますので、また遊びに来てくださいね!!私も、初めまして♪こんばんは♪(*^^*) (2015年8月16日 23時) (レス) id: 9c27d96a79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エイジ | 作成日時：2015年6月7日 22時
