お姉さま ページ34
パーティーのお開きは明け方だが、Aは闇の深いうちに凛月に手を引かれて会場をあとにした。
「ねえ、少しお散歩しましょう？」
Aはまっすぐに泊まっている別棟へ帰ろうとする凛月の手を引いた。
「ほんと散歩好きだよねぇ……いいよ、今日は気分がいいから付き合ってあげる」
凛月は少しお酒を飲んでいた。普段全く飲まないところを見るとたぶん強くないんだろう。
ここにはいつどんな花が咲いて、などとAは庭を案内するように歩いた。
中庭には噴水がある。入っていくと、夜闇の中に赤髪の少年を見つけた。
凛月のせいで夜目が利くようになってきたかもしれないとAは苦笑した。
「司くん？」
「ああ、スーちゃんだ」
Aと凛月が声をかけると、彼は振り向いてお辞儀をした。
「凛月先輩にAお姉さま。ご機嫌麗しく」
柔らかく笑って見せたが、足元が少しふらふらしている。
お兄様に飲まされたのかしら？
「お姉様、お兄様のご婚約おめでとうございます」
頬をほんのりと薔薇色に染め、慣れないお酒にたぶん頭がぼーっとしているんだろう。語調もどこか頭が回っていない感じだ。
歳はAより2歳下で、まだ若い。
「ありがとう」
唯一飲んでいないAはにこりと笑った。
「スーちゃんは飲まされたの？」
「はい……」
司くんは苦笑して見せた。
「かわいそうに……まあこういうのは潰れる前に逃げるのが正解だねよねぇ」
凛月は頷いた。
「お兄様はお酒にお強い方だから、ちょっと加減がわかってない時あるのよねえ……まあ、お兄様も色々な人に勧められて大変そうだけど」
ふふ、とAは笑う。
「でもまだ、平気ですから……」
と司くんは強がってみせる。無理はしないでねとAは言っておく。
「……お姉さまが幸せそうで何よりです」
司くんは穏やかに、少し寂しそうに笑った。立たせておいて倒れられては困るのでAがベンチに座らせた。
「そうね、でもちょっと寂しいわよね」
Aは自分の姉が結婚して行ってしまった時のことを思い出していた。
水のやんだ噴水は静かで、遠くに会場の音楽が聞こえてくる。
「お姉さま方はいつの間にか私を置いて行ってしまわれました……仕方の無いことだとわかってはいるのですが」
気が緩んでいるのか司くんはそんなことを言い出す。
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さなえ(プロフ) - フラッペさん» コメントありがとうございます。お褒めに預かり光栄です。細かいところにこだわって書いてみました。 (2018年8月18日 16時) (
レス) id: b33fb32224 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - お話の内容が濃くて私的には面白い物語でした。こういう細かな文章が好きで、なんか一つ一つに感情がこもっているというか……まぁ、とにかく良い話でした。 (2018年8月16日 1時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さなえ@Ｌｏｖｅ伊織 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sanaeHome/
作成日時：2017年7月29日 16時
