<npr>陰陽無用<rn受短編集> (ページ8)

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愛飢え坊やと青色怪盗<3rn> ページ8

*良い所のお坊っちゃま蘭たんと怪盗しゅーさんという設定。

「今晩ｺﾉ屋敷ﾉ中ﾃﾞ一番ﾉ宝ｦ頂ｷﾆ参上ｼﾏｽﾖｫ…」
青色文字に半角片仮名で書かれた予告状に、届けられた屋敷内は大慌て。
これが悪戯だと考えて笑えるのは、きっと無知な子供か、時代の波に乗り遅れた老人位だ。
青色の半角片仮名で書かれる予告、そして記したものは痕跡も何も残さずに奪う…今噂の「怪盗shu3」が宝を盗みに来る。
それは屋敷の主人に対して大きな不安と焦りを与えた…勿論、仕えている者にもだが。
主人は手配をして宝の警備を固くし最新のセンサー等を取り付け重固なものとした。
流石に破れまいと監視室で高笑いしていたその時にもう…怪盗は、宝の前に現れていたのだ。

「…今晩は」
侵入者により放たれた窓から入る風に、カーテンは吹き飛びそうな位はためいていた。
そして侵入された部屋の主…蘭たんは読書をやめ目を離し、表情も崩さずにドアを指差す。
「…宝は階段を降りてエレベーターに乗った地下にあるから」
「え、いや…」
急に困惑し、言葉に詰まった怪盗ことshu3は指されたドアと蘭たんを交互に見比べて訊ねる。
「貴方が跡取り息子、蘭たんですよね？」
「そうだけど…殺して血を絶たせてやる的な？じゃあ一思いに」
「ｲﾔｲﾔｲﾔ？！俺盗みはしますけど殺しはしませんよ！というか誰が好き好んで惚れた子殺さなくちゃいけないんですかﾁｮｯﾄｫ！」
自身の持つレイピアを首に当てた蘭たんにパッとshu3は離れ早口で捲し立てる。
「…じゃあ何？人質？」
「いやだから話聞いてくださいって…あの、俺蘭たん盗みに来たんすけど」
は？と蘭たんは眉間に皺を寄せ「理解不能」と表した。
「俺は宝なんかじゃなくて…あの人達が愛してるのはあの財宝たちよ？」
「…親にとって子は宝って聞いたんで…大事な息子さん貰っていきますって意味で書いたんですが」
「いや馬鹿じゃないの。俺が宝とか無いから…価値のあるもんはあっちだから。はよ盗んで帰って」
「…そうですね、とっとと盗んで出ちゃいましょう…宝の価値の分からない家なんて」
声を漏らす間もなく蘭たんはshu3の腕に抱えられ、窓から夜空へ飛んだ。
「…降ろしてくれない」
「嫌です」
「…何で俺なん？」
「…宝よりも、蘭たんに惚れたので」
いつか、心も盗んで俺のモノにしますよ…その目の中には、自分だけが映し出されている。
「…やれるもんなら」
少しときめいた自分を否定しながら仕方なく…本当に仕方なく、蘭たんは怪盗に盗まれることにした。