<npr>陰陽無用<rn受短編集> (ページ7)

今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:8,724 hit

キスをしたって目覚めない<sgrn> ページ7

*死ネタ注意

白いベッドの上で、静かに眠っている。
それならどれだけ良かったんやろうか。
蘭たんの遺された家族の泣き声、むせび。
呆然として、汗を拭う事もしないまま虚ろに独り言を呟くハッチ。
目を伏せて「ｳｿﾀﾞ」とぽそりと言葉を空気に溶かしてから、動こうとしないしゅーさん。
そして何よりも…漂う線香の香りと彼の顔に被せられた白い布が、現実を突きつけていた。
それから何分か…俺にとってはずっと長い時間だったような気がするんやけど…パサ、と誰かが外した布の下は確かに蘭たんで。
でもその顔は、実は、寝ていて今すぐにでも起きて「あ、おはよー」なんて間の抜けた声をかけてくれるんじゃないかって…「死」を感じられんかった。
感じられたのは、いつもよりもずっと肌が白くなっている。
本当にそれ位のものだった。
「蘭、たん」
でも声を出してみても反応なんてしなくて。
「お姫様やないんやから、はよ起きな」
こんな無意味過ぎる、結果の分かっている問い。
「はよ起きんと、ちゅーするで、なぁ」
そう言っても、昔読んだお伽噺のように棺のお姫様は笑ってはくれない。
王子様が、来たとしても。
目覚めのキスをしても、永遠に目覚めてなんてくれへん。

…夢を見ているのは、どっちやったんやろうな。