156 二人の今が動く ページ6
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「チョンAさん、書庫の鍵の事だけど…」
親睦会から数週間経った。
会社ではいつも通りセカセカと時間が過ぎ、身を潜めながら過ごす私には、何の変化もない、地味で面白味もない、理想とする毎日が戻ってきた。
今日も書類に目を通す。
今週は上司から言われた仕事をこなしていた。
何十年も前からさかのぼって、利益率を冊子にしないといけない。
パソコンの中のフォルダにはそんなに昔の事は残って居ないから、書庫に資料を集めに行くしかない。
A「はい」
「書庫は今日昼から解放されてるらしいの、どっかの部署が使ってるみたいで」
A「そうですか。じゃあ鍵はあいてますね。」
地下にある書庫は、定期的に清掃されていて、結構キレイ。
でもとにかく書類棚がビッシリで、行くまで気が重い。お昼を済ませたら、行かなきゃだな…。
風呂敷弁当を持ち、いつも通り屋上に向かう。
ランチに向かう可愛い子が必ず視線を向ける窓際は、
今日も私には関係のないエリートが仲良く珈琲を飲んでいる。
何故かこんな私にも優しい声で挨拶をしてくる
なんて事は、もうない。
変わりにお友達みたいに
TH「Aちゃ〜ん、おつかれ!」
明るい声に、軽く会釈を返す。
きまって窓の外を眺めて背中を向ける、黒いスーツ姿。
わざとそんな事をするから、らしくない。
全部前と変わらず元に戻ったから、唯一違うことはそれだけだった。
今日の屋上は曇り空だった。食べながら眺める空はだんだんと黒い雲が増えていく。
「A。」
ふろしきを広げると同時に名前を呼ばれる。
A「ユンギ。」
YG「肌ざむ!……雨、降りそうだし。お前寒くねーの?」
A「大丈夫だけど。今からお昼?」
YG「パン。ここ、座っていい?」
少し離れてベンチに座る。
YG「弁当、うまそーだな。俺にも作れよ」
A「えっ?ほんとに作ろうか?」
YG「あ、いや、やっぱいい。」
目をそらして、恥ずかしそうに俯く。
ユンギは、私が本当のチョンAじゃないと知ってから、ちょっとだけ人見知りする時がある。
いつも威圧的に感じてたから、そんな所がちょっと可愛い。
YG「わ!雨キタし、降ってきた降ってきた」
A「冷たい!!」
YG「降りるぞ、めちゃくちゃ大粒!」
雨の匂いが思い出させる。
ムッとした匂いの中の、甘くて溶け堕ちそうな、香水の匂い。
急いで蓋をしてふろしきごと抱きかかえた。
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王様じゃんぷ(プロフ) - ぐうさん» 仕事の合間に聞いて泣いてみます💮5章も今から話が動くんで楽しんで下さいませ🌟また話しかけて下さい! (2022年11月2日 7時) (レス) id: 708020874a (このIDを非表示/違反報告)
ぐう - このお話すごい大好きです(՞ . .՞)♡このお話がすごい"paid paipar"の曲の歌詞がジミンとヒロインにマッチしていて泣けてきました笑 (2022年11月1日 22時) (レス) @page46 id: afc8ed882c (このIDを非表示/違反報告)
王様じゃんぷ(プロフ) - nnonnoさん» 嬉しくてスクショしました😭笑。モチベが落ちてたので本当に嬉しい🌈また来て下さい😭 (2022年10月27日 22時) (レス) id: 708020874a (このIDを非表示/違反報告)
nnonno(プロフ) - まるで映画を観てるような気持ちで読んでいます。作者様の表現力、言葉のチョイスすべて最高です。伏線の張り方も回収もプロですね!本当に読み応えのある作品でグクと主人公の奥深すぎる愛にも号泣しています。みんな幸せになって欲しい!更新楽しみにしています (2022年10月27日 9時) (レス) @page50 id: 498383e375 (このIDを非表示/違反報告)
王様じゃんぷ(プロフ) - 7neanooonさん» お疲れ様です😌💓5章で待ってまする🌈 (2022年10月17日 7時) (レス) id: 708020874a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:王様じゃんぷ | 作成日時:2022年9月1日 16時