なぜなら、僕達は。【bts】

・fin. ページ8

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「A」

電話越しの君の声。

「テヒョン。珍しいね、電話なんてさ」



そう言った君を、もう僕は
こわがらない。



「A…。聞きたい事があるんだけど」

「なんでも聞いてよ、このAさんに！」なんて言ってふざけた。


「鞄にぶら下げてる砂、なんなの？」

って。欲張りな僕が意地悪にきいたら


「……砂？ああ。なんだっけ、忘れた。昔の事だから」
「忘れたの？」
「忘れたよ。忘れようって頑張ってる」



電話が繋ぐ、二人の距離が
遠くて、遠くて、苦しい



「だけど電話で声聞いたら…駄目だ……」



電話の向こうできっと涙を流す君を
抱きしめられない僕も、グッと涙を堪えた


「A。卒業したら、島に戻ってきなよ」
「……えっ？……なんで。出来ないよ。テヒョンもソウルに来るでしょ？」


「行かない」
「……えっ…だって！ソウルで就職するって…！」


「島が、好きだから。島の砂が、好きだから。Aと同じ。いや、もっとかな」
「…わかんない。言ってる意味がよくわかんないよ…」


「A……」


苦しくって。愛しくって
ツーっと涙が頬をつたう



「島で僕と、一緒に。一緒に海を眺めてようよ。じいちゃんばあちゃんみたいに、ずっと一緒に。死ぬまで。眺めてたい…Aと」




言葉に出来ない想い
遠い島から、君に届け




「Aが、好きだった。今も、変わらない。好き…好きだよ」



波の音が遠くに聞こえる。
Aの場所は、何が、聞こえるの？




「……聞いてる？」
「聞いてるよ…」
「……返事して。もう一度言うね？島で、Aと一緒に居たい。Aが好き、大好…」
「テヒョンの……ばか。」




……ばか…




「ずっと待ってたんだよ」


……待ってた
それは僕のセリフ。

僕はいつも、この島で君を…待ってた


「ずっとずっと、ずっとずーっと、テヒョンに好きって、小さい頃みたいに言ってもらえるの…待ってた」






ソウルの内定を蹴り飛ばした。
いさぎよく、カッコよく、お断りだ！

初任給は島の平均の倍だった。
ボーナスも倍以上だった。

だけど

誰もが喜ぶ安定とお金を僕は
一切惜しいとは思わなかった。







なぜって？


なぜなら
この島の砂も、この島の海も、太陽も
君と僕のふるさとのこの景色、全部…


決してお金では買えないからだよ。




君が教えてくれた。大切なもの。



この島の眩しい、君。

また夏がくる。もうサヨナラの無い夏が、くる。











砂の名前ーFin.

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