なぜなら、僕達は。【bts】

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……疲れた。消えたい。
神様なんて、いない。



俺だってずっと…何度も何度も
思ってたよ。



消えよう。



言えなかった。言えばヌナは
これ以上ないくらい

優しく笑うだろうって
わかってたから。

怖くて言えなかった。



「……行こう」



なぁ、はやく、ヌナ
早く行こう
早く行きたい。行きたいんだよ、






なぜなら…

神様なんか、居ない。
運命は変えらんねぇってわかったから。






幸せに続く階段をヌナと…のぼる。





「俺はさぁ、ヌナ。姉弟じゃない他人として生きる新しい人生が楽しみで仕方ねぇよ？」
「うん。私も。楽しみで、嬉しい…よ……」





俺の目からは涙が零れるのに。

ヌナは今まで生きてきて
今日ほど穏やかに優しく、
笑ってくれた日はあったか。ってくらい


優しく
笑ってくれた。






「ヌナァ…二人だけの場所は幸せだよな……」


コクン、うなずいて笑うヌナ。


「幸せだよ、幸せに…なれるんだよ」






ああ、あったわ…

１日だけ。
こんな風に笑う、ヌナの笑顔を見た日。


あの日と同じ
あいつから抜け出した日と同じ優しい笑顔じゃん。


この世界から抜け出す俺達は
あの日あの小屋から抜け出した時ぐらい
……笑顔だ。



その笑顔が、俺を包む。


どろどろの日々が、溶けて
知らなかった明るい世界が
広がっていく。



幸せに、なりたい。



春はもう、そこまで来てた。
すぐそこまで。








・・








「あぁ……いっけね、ヌナ」
「どうしたの？」
「落とした、俺さっきの店に鍵落っことしてきたわ」
「……鍵？」


俺は一人店に戻った



「あ、あれ？？さっきの…」
「どうかされました？」

「…あの。これを、下さい」
「こちらの、リング？」




「この指輪を、下さい」





二人の様な親のもとに生まれたら
どんなに幸せだったんだろうな、ヌナ。





「彼女さん、喜んでくれるといいんですけど」


ニコリ、笑う。
お腹を抱えるその腰に腕を回して支える男が


「喜ぶに決まってんだろぉ？お兄さん、うちの嫁ちゃんの作ったもんには、幸せになる魔法がかかってます！」

って自慢げに言ったら、ニコん…と口をつむって笑顔を作った。






その隣で恥ずかしそうにお腹に手を置いて優しく微笑む。


「溶けない魔法ですよ？」



溶けない…魔法…か。







なあヌナ……

二人の様に、他人として生まれたなら
何か変わってたのかなって…

ヌナもそう…想ったんだろ？


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