なぜなら、僕達は。【bts】

・ ページ25

.


俺を抱いてくれるヌナは
終わったあと、必ず泣いた。


理由が…わかるけど、わかりたくなくて
俺も同じ思いで涙が溢れそうで


「水、飲む？…早く髪、乾かせよ」


見てみぬフリした。








それからも、繰り返した。
いつかきっと。神様は居る。ヌナと俺は幸せになる…

呪文のように、繰り返した。
俺自身に向けて、繰り返した。






夕暮れ時。
ヌナと買い物をしていつもと違う道を
遠回りして歩く。



「…こんなとこにお店…ユンギ知ってた？」
「看板あったから、知ってたけど。なに。入りたいの？」


店先を見つめて、首を振る。


「入る？」

やっぱり首を振るヌナ

「なんで。入ろう、」
「だけど…」


お洒落だとは決して言えない俺とヌナ。
だけどその手をひいて、扉をカランと開けた。


「いらっしゃいませ〜」


前髪が短い、店に馴染んだ雰囲気の
俺達とは全く違うニオイのする女性が微笑む。


ヌナは恥ずかしそうに店を見回す。

その目が…
初めて見るヌナの目で、驚いた。


「……かわいい…」
「…ははっ、そんな嬉しそうな顔、初めてみたわ」



アクセサリーなんて、身に付けた事がないヌナ。


そんな余裕なんて
財布にも心にもなくて
俺は…知らなかった。

ヌナは、普通の女の子として過ごした時間がないまま、大人になったんだよな



「……気に入ったやつ、買えば？買ってやるよ」




「そっちは…ネックレスや髪飾りです、こっちはー…」

レジから抜けてきた体はふっくらしていて
ヌナと二人で視線がその膨らみに移る



お腹ん中……





「……たっだいまあ〜って…あっ、こら！座ってなきゃダメだって！今は安静に…！」
「いいのっ、お客さん来てるから」



次は勢いよく現れた男に、
ヌナと俺の視線が移る


「ハッ……！いらっしゃいませ〜……」


お腹をさすりながら「座っててよ！湿布買ってきた、腰痛いでしょ？あ！あと狂ったみたいに苺ばっか食べるから苺も！」




男は……せわしない。





「……赤ちゃん、いるんですか？」


ヌナが二人を見つめた


「はい！僕のベイビーちゃんがここに」
「もう安定期なのに、この人心配性で…」
「だって！お医者さんに言われたよ？ちょっとむくみが酷いから安静に、って！」
「わかってるぅ！無理はしてないもん！」

「…ハッ…」
「…ハッ、スミマセン、ごゆっくり選んで下さいっ」


二人は俺達を見て我に返って焦る。
ヌナは二人を見てクスッと笑った。



.

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す