俺の手(Y.side) ページ48
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いつも通りの時間に到着した俺に警備員さんが走ってきて、みいが夏風邪と貧血で緊急入院し、点滴を打って実家に戻ったと告げられた。
……ほんとにもう。
安心し過ぎて、良かった…と声に出てしまったけど、続けてみいが俺に謝罪している気持ちを伝えられて、モヤモヤした。
練習が終わってから、小太郎が少し話がしたいと言ってきた、俺も詳しく聞きたかったから丁度良かった。
『で、どうだった?夏風邪と貧血って聞いたけど』
「うん、夕方退院してきた。やっぱ回復力半端ないわ、なんちゃらは風邪ひかないとか言うしね」
『ひいてるけどね。でも良かった、ほんとに。』
「で、さっき実家で飯くって話したんだけど。」
何気なく話す内容から
家族ぐるみで仲がいい“幼なじみ”と言う関係を突きつけられているようで、直視できなくてエッジの手入れをしてしまう。
「俺みいと付き合おうかなって。思ってんだよね、まあまだ返事待ちだけど‥」
手を止めて、靴をしまって、ちゃんと向き合う。
『……そうなんだ』
「みいが言ってた。倒れた時…冷たい手で握りしめてくれたのを覚えてるって。ありがとうって。」
え……?
「俺は右手でみいの頭を支えてて、左手で汗をぬぐってたから手は握ってない」
救急車でも応急処置されていて、俺はみいの親に連絡を入れたりしていて。握ってないから、俺じゃないんだよね。って言いながら、垂れ目で柔らかく笑って俺をみる。
小太郎は明るくて、優しくて
信頼できて、気さくで
悪いとこなんて見つからない。
俺はこいつとみいが一緒になるなら
本当にみいが幸せになれると思えるから。
だから俺に向くみいを自ら……
俺は……
『で?』
「俺だと思ってるから否定してない」
なんだそれ。
胸が締め付けられて手に力が入る。
『……俺が握った』
本当は抱きしめたかったけど。
「うん」
それが真実なのに。
「じゃ、その手は羽生君だったって、言えば良かったの?」
いつも優しい小太郎の俺を見る目は、見たことの無い鋭い瞳だった。
「羽生くんだったって言えばあいつどう感じると思う?羽生くんはそんなあいつに何かしてやれんの?」
全部が何一つ間違ってない言葉で、
言葉以上の意味が胸に突き刺さる。
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王様じゃんぷ(プロフ) - だんごさん» ありがとうございます(ToT)自己満足100%で楽しく書いたので、楽しいって言って貰えて嬉しいです。感謝:) (2021年10月21日 10時) (レス) id: 8d4c9c3192 (このIDを非表示/違反報告)
だんご(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いてます。これからの展開どうなるのんかぁー?更新待ってます! (2021年10月20日 14時) (レス) @page41 id: 69db7dc37a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:王様じゃんぷ | 作成日時:2021年5月7日 22時