検索窓
今日:3 hit、昨日:5 hit、合計:36,831 hit

俺の手(Y.side) ページ48

.


いつも通りの時間に到着した俺に警備員さんが走ってきて、みいが夏風邪と貧血で緊急入院し、点滴を打って実家に戻ったと告げられた。

……ほんとにもう。


安心し過ぎて、良かった…と声に出てしまったけど、続けてみいが俺に謝罪している気持ちを伝えられて、モヤモヤした。


練習が終わってから、小太郎が少し話がしたいと言ってきた、俺も詳しく聞きたかったから丁度良かった。





『で、どうだった?夏風邪と貧血って聞いたけど』
「うん、夕方退院してきた。やっぱ回復力半端ないわ、なんちゃらは風邪ひかないとか言うしね」
『ひいてるけどね。でも良かった、ほんとに。』



「で、さっき実家で飯くって話したんだけど。」




何気なく話す内容から
家族ぐるみで仲がいい“幼なじみ”と言う関係を突きつけられているようで、直視できなくてエッジの手入れをしてしまう。



「俺みいと付き合おうかなって。思ってんだよね、まあまだ返事待ちだけど‥」


手を止めて、靴をしまって、ちゃんと向き合う。


『……そうなんだ』

「みいが言ってた。倒れた時…冷たい手で握りしめてくれたのを覚えてるって。ありがとうって。」


え……?

「俺は右手でみいの頭を支えてて、左手で汗をぬぐってたから手は握ってない」



救急車でも応急処置されていて、俺はみいの親に連絡を入れたりしていて。握ってないから、俺じゃないんだよね。って言いながら、垂れ目で柔らかく笑って俺をみる。





小太郎は明るくて、優しくて
信頼できて、気さくで
悪いとこなんて見つからない。

俺はこいつとみいが一緒になるなら
本当にみいが幸せになれると思えるから。


だから俺に向くみいを自ら……
俺は……



『で?』

「俺だと思ってるから否定してない」


なんだそれ。
胸が締め付けられて手に力が入る。


『……俺が握った』

本当は抱きしめたかったけど。

「うん」

それが真実なのに。



「じゃ、その手は羽生君だったって、言えば良かったの?」



いつも優しい小太郎の俺を見る目は、見たことの無い鋭い瞳だった。


「羽生くんだったって言えばあいつどう感じると思う?羽生くんはそんなあいつに何かしてやれんの?」


全部が何一つ間違ってない言葉で、
言葉以上の意味が胸に突き刺さる。



.

49→←47



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (75 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
62人がお気に入り
設定タグ:羽生結弦 , フィギュアスケート   
作品ジャンル:ラブコメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

王様じゃんぷ(プロフ) - だんごさん» ありがとうございます(ToT)自己満足100%で楽しく書いたので、楽しいって言って貰えて嬉しいです。感謝:) (2021年10月21日 10時) (レス) id: 8d4c9c3192 (このIDを非表示/違反報告)
だんご(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いてます。これからの展開どうなるのんかぁー?更新待ってます! (2021年10月20日 14時) (レス) @page41 id: 69db7dc37a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:王様じゃんぷ | 作成日時:2021年5月7日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。