彼女と彼 ページ5
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「ほんま?嘘やん!鼻赤くなってんで!トナカイさんや!」
「大丈夫やって!どうやった?初めての撮影。」
「なんか緊張したけど、やっぱりお芝居って楽しいなあ!!これから頑張るわ!」
ふわふわと喋る彼女は、ゆるりと巻かれた髪の毛を風になびかせる。
三月はまだまだ寒くて、その冷たい風に二人で身震いすると階段を降りた。
「そのジーンズええなあ」
「ほんま?嬉しいわあ!これビンテージもんやねん」
「古着とか着るんや、」
「うん!大人になってからええなあって思い始めて!笑」
可愛いやろーって嬉しそうに足を動かしたAは振り返ってにこーっと微笑む。
「大倉さん、」
「え、なに?笑」
「私東京来たばっかやねんやんか〜!」
「うん笑」
「おすすめのお店教えてや〜!!」
ニヤニヤと手をさするAに笑いながらタクシーを止める。
「お酒得意?」
「だーいすき!!!」
「よっしゃ!任せとけ!!!」
二人でタクシーに乗り込んで行き先を言えば、黒の車体は颯爽と夜の街を走った。
隣でAが嬉しそうに身を揺らす。
「うわー!素敵ー!!」
俺が選んだのは落ち着いた雰囲気の和食店で、先日役作りのために来てみたお店だった。
あまり期待せずに入ったのに雰囲気が良く、値段も落ち着いていて味も美味しい。
きっと喜んでくれるだろうと思ってはいたけど、予想以上の反応に頬が緩む。
気を利かせてくれたのか案内されたのは個室で、向かい合わせに腰掛けるとどちらともなく目を合わせた。
「まずはやっぱり?」
「ビールでしょ!!!!」
「「かんぱ〜い!」」
運ばれてきた金色に光るジョッキをガチりと鳴らす。
そのまま彼女を見ていれば、ジョッキに口をつけてキューっとそれを流し込んだ。
申し分無い呑みっぷりにはAらしさが溢れていて、着飾らないその姿に嬉しくなりながら俺もアルコールを流し込む。
先に出されたお通しに手をつけると筑前煮で、Aが初めてうちにご飯を食べに来たことを思い出した。
「なあ、椎茸食べて?」
「まだ嫌いなんや笑、ええよ、入れ?」
「そうやねん笑、ありがとう!」
コロコロと椎茸を俺の皿に移したAは、あの時と変わらない美味しそうな笑顔で具を頬張った。
椎茸が苦手なところ。
音楽が好きなところ。
そしてさっき知った古着の趣味。
すばるくんが、筑前煮が好きで椎茸が嫌いなことを知った時の衝撃を思い出す。
彼女と彼はどことなく似ている。
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じょび(プロフ) - さやさん» さやさんこんにちは!いつもコメントありがとうございます^^すばるくんも少しずつ活躍してくれると思うのでぜひお楽しみに! (2019年2月23日 17時) (レス) id: cab6392b32 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 更新ありがとうございます!仕事終わりに通知見て叫びました\(^^)/すばるくんが・・・ですかね?楽しみです! (2019年2月16日 13時) (レス) id: 05264bd7fa (このIDを非表示/違反報告)
じょび(プロフ) - 未来奈さん» お返事遅くなって申し訳ございません_(。。)_コメントありがとうございます!随分長かったでしょうに一気読み!ほんとに嬉しい限りです。遅くなりましたがただいま更新させていただきました!これから少しずつ頻度を増やしていけたらと思ってます!よろしくお願いします (2019年2月16日 12時) (レス) id: cab6392b32 (このIDを非表示/違反報告)
未来奈(プロフ) - このテンポの良さと気楽に読める感じがハマって一気読みしちゃいました!更新楽しみにしてます! (2019年2月7日 16時) (レス) id: bce209e3a6 (このIDを非表示/違反報告)
じょび(プロフ) - さやさん» さやさん!いつもコメントありがとうございます〜お待たせしてしまって申し訳ないです!お仕事頑張ってください(○´ー`○) (2018年12月17日 8時) (レス) id: cab6392b32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:じょび | 作成日時:2018年8月25日 16時