絡まり、絡まる（∞） (ページ3)

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オレンジの男ページ3

Aと
初めて会うたのは
たしか今日みたいな朝の
会社までの道すがらだった

「やめてください」

「昨日はそんな態度じゃなかっただろ？」

「迷惑です、離して」

綺麗な女の人やなと思った
風で髪がなびいて
見えへんかった顔
風が邪魔やったんか、一瞬メガネを取って
そしたらものっすごい美人で驚いた
瓶底みたいな分厚いメガネ
まるで変装してるみたいに、美人が消えた
こらぁ、誰も助けへんわけや

へんな男に絡まれてて
道を歩くうちの会社の人間は
見て見ぬふりっていう感じ

「離してやってもらえます？」

「誰だよ、お前
　関係ねーだろ、引っ込んでろ」

後ろから近寄ると
男はそう言い捨て
俺のほうを見もせんと、また彼女の腕を引っ張った

「おにーいさん、彼女、俺の女♪」

うるせーって言うて殴りかかったきた男
拳をよけて、腹をグッて１発殴ってやったら
一瞬にして膝から崩れ落ちていった
オトンに聞いとった護身術
こんなとこで役に立つとは驚きやわ

「大丈夫？」

「ありがと」

口数少なく、彼女がお礼を言う
メガネのイメージと違う
かがんだ体勢から立ち上がった彼女の
派手なブラジャーが胸元から一瞬見えて
さっきの美人顔といい、このメガネといい
なんか気になってもうたのは事実

「いや、なんとかなってよかったわ」

「弱いくせに助けてくれてどうもね」

「は？」

一瞬、何を言われたんかわからんかった
弱いくせにって言うた？今
助けたんに？
困ってたんそっちやろ？

「もう少しで、あのくそ野郎
　ぶん殴って地面に叩きつけるとこだった
　ありがと、ギリギリ助けてくれて(笑)」

さ、行こ
そう言いながら、ニコって笑った顔が
美人なのに、ほんまにかわいくて
失礼なこと言われてんのに
思わずぽーってしてもうた
地面に座り込んだまま苦しんでる男の
腕あたりを踏んだのはわざとやろう

「俺、第二広告宣伝部の丸山」

名刺を渡しながら、一緒に会社までの道を歩く
背ぇ高いな
俺も高いけど、そんなにヒールなしで
この身長なら、結構なもんやな

「あら、名刺くれるんだ」

「いらん？(笑)」

思わずヘラっと笑った俺を
じーっと見つめたかと思うと

「よく見るとわりとイケメンだね
　隆平、よろしくね」

さっそくの名前呼びで
彼女はまたねって、自分は名乗らんと
エレベーターに乗り込んで行った