【鬼滅の刃】修行の合間に茶菓子はいかが？【短編集】

時の香　その３ ページ24

放課後、校舎の裏口に行くとタクシーが止まっており、そのまま悲鳴嶼の自宅に案内された



車内で一人考える



あの人は約束を覚えてくれているだろうか。

そもそも前世の記憶があるのだろうか。

私のことをちゃんと覚えているのだろうか。




張り裂けそうな心臓とともに悲鳴嶼の自宅前でタクシーを下りる



と、既に悲鳴嶼が玄関の前で佇んでいた。


その姿が目に映るだけで涙が溢れそうになる




悲「……中に入ろう」




玄関をくぐるとそこは立派な和建築の室内だった。

ほのかにお香の薫りもする


思いきって言葉を放つ




『っ…悲鳴嶼さん、わたし……』



ガバッ



『へ………』




突然のことだった




あの時と変わらない、逞しい腕で抱き締められている。


ずっと待ちわびていたように、痛いくらいに密着している






悲「ずっと、会いたかった………！」




それはまるでやっとのことで搾り出せた声のようだった。




悲「ずっとお前を探していた。この時代に生まれた時からずっと………」


やっと会えた、と言ってAの頬を撫でる



すると糸が切れたように大粒の涙がAの目から零れ落ちる


『っ………！ ひめじまさんっ……！！
会いたかった………私もずっとずっと探しておりました……！！』


わあんと声をあげて泣き出すと悲鳴嶼は優しく背中を撫でて涙を拭う


悲「A……遅くなってすまない。あの時の約束、今果たそう……」


そう言ってAの腰を掴み再び引き寄せる



悲「私と夫婦になってくれ」



しっかりと瞳を見つめられる



顔を真っ赤にしながらAは涙をぼろぼろ溢す


『はい……っ
ずっと……ずっと貴方をお慕いしておりました……！』




時を越えた約束が果たされると、どちらともなく吸い寄せられるように唇を合わせた







『もう絶対に離しません』


悲「ああ。私もそのつもりだ」

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