第６２話 ページ1
〜緑谷side〜
「こんなこと、中学の頃もあったよね」
食堂へ向かう途中
僕はそう言った
もちろん、手は、未だ繋いだまま
「…そうだっけ」
Aちゃんは
わざとらしく、空っぽな返事をした
「そうだよ
…僕はあの時、見ていることしか
できなかったけど
かっちゃんのあんな必死な顔見るの
すごい久しぶりだったから…
よく、覚えてるんだ」
これは、全て本心
Aちゃんは
“かっちゃん”
と、言った瞬間
ピクリと一瞬体を強ばらせた
...まぁ、思った通りかな
「っ……え、で、デク…？」
安心して、と言うように
僕はさっきまでよりも強く
Aちゃんの手を握った
「本当にいいの？」
僕の問いに、Aちゃんの足が止まった
「…なにが」
「かっちゃんのことだよ」
「…知らない」
頑固な彼女も可愛いくて
正直、甘やかしたくなるけど
今は
「何があったか知らないし、
聞かないけど
今、謝らないと
…もう、元に戻らないと思うよ」
...我慢しないといけない
「…私は悪くない」
「かっちゃんがいないと
どうなるのか、
Aちゃんが一番分かってるはずだよ」
諭すように、
叱るように、
少し、強めに言えば
きっとこの子はすぐ堕ちる
ほら、もう、目が真っ黒でどろどろだ
そして、遂に
「…私には、デクがいる…
頼って…いいんでしょ…？」
そう言って、僕を見つめた
「！」
ふふっ…
その質問はずるいなぁ…
僕の返事なんて決まってる
「…もちろんだよ！」
ごめんね、かっちゃん
もう、Aちゃんは
「…かっちゃんを忘れさせてくれる…？」
「Aちゃんが望むなら」
僕のものだよ
「僕がかっちゃんの代わりになるよ」
「ありがと…」
僕の腕の中にいる君は
誰よりも美しくて
誰よりも可愛い
本物の悪魔だ
「大好きだよ…デク」
続く
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作者名：lilu.selene | 作成日時：2018年4月15日 21時
