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遅めの朝食を食べてカラーリングを始める。
泡を作って頭に乗せていく廉を脱衣所から見ていると
「 Aも手伝ってや〜 」と声を響かせた。
後ろに立って泡を貰い頭にちょこんと乗せていく。
手袋をした手で馴染むように髪に指を通す。
「 Aのマッサージ気持ちいい 」
「 マッサージしてるつもりない(笑) 」
「 また眠くなりそう 」
「 いいよ、目瞑っても 」
「 ふふ、時間になったら教えて 」
黒髪に染料がついて殆ど泡になった。
この状態を少しの間保ってから洗い流すんだけど
廉は本当に目を瞑って眠ろうとしていたので
船を漕いだ反動で怪我をしないように脱衣所から
見守ることにした。
「 ねー、廉 」
「 んー 」
話しかけるとまだ意識のある廉は返事をする。
「 誕生日まで帰ってきてくれるかな 」
「 …二人？ 」
「 うん。さすがに誕生日は祝ってほしくない？
ほら、再婚して初めての子供達の誕生日だし 」
「 帰ってくると思うけどな〜 」
「 もし帰ってこなかったらさ、 」
カラーリングが入っていた箱を潰しながら話す私を
目を開けて不思議そうに見つめる廉。
「 二人でケーキ食べようね 」
「 ええよ。でも一日違いやからケーキ一個な 」
「 やだ。合同パーティー絶対やだ 」
「 めっちゃ拒否るやん(笑) 」
「 プレートに名前書いてほしい 」
「 Aちゃんって？ 」
「 うん。小さい頃毎年そうだった。
ケーキを食べる前にプレートかじるの 」
幼い記憶の中で笑う今は会えない父親。
何度も手を伸ばしては消えてしまう、そんな存在。
「 俺もそうしよっかな。廉くんって 」
「 子供みたいだね 」
「 まだまだ大人にはなれへんよ 」
泡をつけた頭で真面目なことを言うもんだから
思わず笑ってしまった。
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作者名：いと | 作成日時：2020年10月27日 17時
