甘ったるい彼等④【短編集】(雪男) (ページ5)

今日:162 hit、昨日:420 hit、合計:131,926 hit

| ページ5

ラウール side

道路を挟んだ向こう側でくるりと向きを変えて早足で進んでいってしまう彼女に電話を切られ、早く変われ！と信号を睨むことしか出来ない時間がもどかしい

大通りでもないくせに長い信号を恨めしく思いながら、青になった瞬間駆け出した。

『ちょっ、と！』

「…わっ！！」

『はぁっはっ…も、待ってって、言ったのにっ！』

「ご、ごめん」

涼しくなったとは言え、長い距離を走れば汗が吹き出す

追い付いた僕を見て罪悪感が湧いたのか、逃げることも肩を掴んだ手を払うこともせず、大人しく捕まえられるAちゃん。

『なんで逃げるの』

「いや、、あの…」

『用事あった感じ？』

「そう、じゃないけど…」

『…僕に言えないこと？』

目も合わしてくれず、何かを隠すような歯切れの悪い返答に、会えて嬉しくなったのは僕だけ？追いかけるような真似をして、やっぱり子どもだと思った？僕に言えないことって何？と色んな感情が押し寄せてきて、晴れてた心が一気に曇った。

.