甘ったるい彼等④【短編集】(雪男) (ページ30)

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翔太 side

だけど思ったよりその人は見つからなくて

明日もう一度店に行って、いつものように笑う姿を見ればこの胸のざわめきも消えてくれるかななんて、半ば諦めながら大通りに向かって足を進めていると小路地から物音が聞こえてきたから最後の賭けだとそっと腰を屈めた。

チッ……いちゃこらなら家でやれっつの

ひょろっと背の高いのと小柄な二つの影が重なり合って何やら
ごそごそと蠢いていて、俺の賭けは大外れ

今日何度目かの溜め息を吐いて踵を返そうとしたところで俺の耳が反応した。

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＜なぁ、いつ戻ってくるんだよ＞

「…戻らないって言ってるでしょ、もうこんなのやめて」

＜何だよ、お前みたいな馬鹿女愛してやれんのは俺だけだろ？＞

「ゃだっ…」

＜連絡も無視するし、何回こーやって迎えに来てやっても逃げんだもん。…そろそろ俺、怒っちゃうよ？＞

「ぃ、や…ごめんなさい……！」

＜なぁ、クソみてーな女のくせに離れようとか考えんなよ
それともやっぱり一緒に死ぬ？＞

「ぁっ、、ごめ、」

＜あとさぁ、あの店今すぐ辞めてこい。あのおっさんお前囲おうとするからダルいんだよ。＞

「ぃ、や、、です、」

＜あ？＞

「すき、なんです、あそこが、、っ」

＜…お前、俺の言うこと聞けねーの？＞

「ぁ…」

パッと近くの灯りに照らされた、恐怖と落胆で歪む顔
あぁ、俺が一番見たくない顔だ。

本来なら警察とか、そーゆーのに頼るべきなのかもしれないけど
俺の体は心に正直だから。
気が付いたら高く振りかぶったその腕を掴みに行っていた。

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