甘ったるい彼等④【短編集】(雪男) (ページ27)

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you side

『ねぇめちゃくちゃいい。似合いすぎだよほんと。』

目の前に立って、労いの言葉や感想を求める言葉を私が吐く前に
矢継ぎ早に褒めてくれる涼太

『ちょっとやばいわ。
　これはパーマ？セット？めっちゃいいね
　結構バッサリだもんね、30㎝は切った？
　あ、首元寒くない？ご飯より先にマフラー見に行こうか』

「ちょっとまってまって、落ち着いて」

『ん？落ち着いてるよ？』

「いや、ちょっと一旦深呼吸しよ」

固定概念みたいなものを押し付けるのも、押し付けられるのも嫌いな彼だから、キャラじゃない！なんてことは言わないけれど

話すスピードも速いし、言葉数も普段の倍はありそうだし
返事をする余裕を与えない感じがいつもと違って可笑しくなる。

「私なにも返事できてないよ(笑)」

『あぁそうか、ごめん。ちょっと動揺してるわ』

「んふ、そうみたいだね？」

『ねぇ今日やっぱり家でもいい？』

「え？行きたかったお店予約できたって喜んでなかった？」

『そうなんだけど、予定変更。お店はいつでも行けるけど
　切り立てを堪能できるのは今だけでしょ？』

「そう、かもだけど、、いいの？」

『いいの。決まりね。今日は配達員さんに甘えちゃいましょう』

「うん」

『本音言うなら、誰にもAを見せたくないからさ』

だから早く帰ろうなんて
そんなことを照れもせずにサラッと言いのけてしまうから
今度はこちらが動揺して固まってしまう。

『A？』
立ち止まる私を振り返って不思議そうに近付いてくる涼太

『あ、そうだ』

『昨日までのAも今日からのAも誰より一番可愛いよ』

『可愛いって伝え忘れてたね』とハニカミながら手を繋がれると、私が世界一の幸せ者だと胸を張りたくなった。

こんな些細な変化でここまで愛でてくれるのだ
世界一と言っても過言なんてことはないだろう。

髪を切ることを伝えずときめかせてやろうなんて企んでいたのに
結局こちらがこんなにもときめいてしまってる。

予想外だったような想像の範疇なような
でもまぁいっか、幸せだから。と彼と繋がる指に力を込めたら
気持ちが伝わったのかふわっと笑って涼太が振り向いた。

Fin.