甘ったるい彼等④【短編集】(雪男) (ページ20)

今日:379 hit、昨日:420 hit、合計:132,143 hit

| ページ20

you side

『なんじにかえってくるー？』

「んー、お昼過ぎかなぁ？ご飯先に食べてていいからね」

『いいーまってるー』

「ごめんね」

『いーよー。かみきっちゃうのー？』

「うーん、長さは変えないかな。カラーだけしてもらうつもり」

『くりみたいなのにしてー』

「くり？栗って言った？」

洗面所まで少し距離があるというのに、わざわざ大声を張って話しかけてくるからあぁ喋りにくい！と寝室に顔を突っ込むと嬉そうな亮平くん

こっちきてと手招きするので仕方なくベッドの縁に腰かける。

『…リップぬった？』

まだポヤポヤとした喋り方の亮平くんに、返事の代わりにキスをする。

『んふ、まだだ』

「してからじゃないと怒るじゃん」

『そりゃね、お守りですから』

「ん、ありがと。いってくるね」

『はい、気を付けて。あ、ねぇ』

なに？と振り返れば体を優しく包まれて、もう一度柔らかなキスが降ってきた。

.
.

何をしたって怒らないで有名な彼だけど
唯一、いってらっしゃいのキスを欠かすととても不機嫌になる。

俺がオフでよく寝入ってても起こして！と言うので
付き合い初めの頃に、どうしてそこまで拘るのかと尋ねた。

『あのね、キスはドーパミンやセロトニン、オキシトシンなんかを分泌させて疲れやストレスを軽減させたり、エンドルフィンっていうモルヒネと同様の効果を発揮させたり万能なの。しかも気持ちの浮き沈みの安定させてくれるから事故に遭う確率だって下げてくれるんだよ。それにこれは色んな文献に記されてて＿＿』

「……」

『あ、引いてる？』

「や、引いてないです。」

『敬語やめてよ(笑)
　とにかく！キスとハグは毎日しないとダメ。お守りだから』

「うん、」

『俺が寝てても起こしてね？』

「うーん、、」

『即答してよー』

「努力、します、、」

『はい、お願いします』

かく言う亮平くんは、先に出る時絶対に私を起こさない
起きて顔見たかったなって思わないことはないけど

＿『お守り、ありがとう』

朝起きてこのラインを見ると１日が気持ち良く始まるし
なにより毎日こうして元気に彼の元へ帰って来れているから
亮平くんの言う通り確かに効果はあるのだと思う。

Fin.